トマトの正しい栽培方法とは?特徴やよくあるトラブルの対策方法についても解説!

トマトの正しい栽培方法とは?特徴やよくあるトラブルの対策方法についても解説!

2023.09.27
目次
  1. トマトの特徴
  2. トマトの栽培方法
  3. トマト栽培によくあるトラブルと対策方法
  4. まとめ

トマト農家がトマトの栽培方法と病気対策を正しく理解することは非常に重要です。まず、正しい栽培方法を理解することで、収量と品質を最大限に向上させることができます。適切な施肥、水分、温度、間引きなどの管理が実施されれば、トマトプラントは健康で強力に育ち、収穫量が増え、市場価値が向上します。

また、病気の対策方法を知ることは、病害の早期発見と制御につながります。トマトはさまざまな病気に感染しやすく、感染拡大を防ぐことは不可欠です。正しい病害の診断と予防措置を理解することで、化学薬品の使用を最小限に抑え、持続可能な農業を実践できます。これは環境への負荷を軽減し、生産物の安全性を確保する重要な要素です。

この記事では、これからトマトを育てようとしている方や、トマトの病気などのトラブルにあって困っている方のために、トマトの正しい栽培方法やトラブルの対策方法を解説します。

1. トマトの特徴

まずは、トマトの栄養素や調理方法について解説します。

トマト農家にとって、栄養素や調理方法を理解することは重要です。栄養素のバランスは収穫量や品質に直結し、植物の健康と成長に影響を与えます。また、トマトの品種や用途に応じて、収穫時期や調理方法を選択する必要があります。トマトは多くのビタミン、ミネラル、抗酸化物質を含む健康に良い食材であり、調理方法によってその栄養価を最大限に引き出すことができます。農家は市場や消費者の要求に応え、高品質で美味しいトマトを提供するために、これらの要素を熟知し、実践する必要があります。これにより、安定した収益と顧客満足度を確保できます。

栄養素

まずは、トマトのもつ栄養素について説明します。

美容に良いリコピン

トマトに含まれるリコピンは、その鮮やかな赤色が特徴ですが、それだけでなく肌の美容にも大いに役立つ成分です。リコピンには強力な抗酸化作用があり、肌のシミやしわなどの予防に貢献します。さらに驚くべきことに、リコピンはβ-カロテンの2倍、ビタミンEの100倍とも言われるほどの効力を持っています。

リコピンは熱にも強い性質を持っており、トマトを加熱調理してもその効果を損なうことがほとんどありません。むしろ、油と一緒に調理することで、体内での吸収がさらに促進されるのも魅力の一つです。

身体の抵抗力を強めるビタミンC

トマトはビタミンCの宝庫です。大きめのトマト1個(約250g)を摂るだけで、1日に必要なビタミンCの約1/3を補うことができます。このビタミンCは、ストレスや風邪に対する免疫力を強化するのに役立つだけでなく、鉄やカルシウムの吸収もサポートします。

身体機能を調整するβ-カロテン

トマトは、抗酸化作用に富むβ-カロテンも豊富に含んでいます。体内で必要な分だけビタミンAに変換され、免疫機能や視力を維持できます。

コレステロール値にも効果的な食物繊維

トマトは、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方を含んでいます。特に肉厚なトマトはペクチンという水溶性食物繊維が豊富に含まれており、これが血中コレステロール値を下げるのに寄与します。ペクチンを積極的に摂りたい方には、トマトの丸かじりがおすすめです。

また、不溶性食物繊維も含まれており、これは便のかさを増やし、便通を正常に保つのに役立ちます。便秘が気になる方にもトマトは嬉しい食材です。

トマトの美味しい食べ方

トマトは生のままでも美味しく食べられる野菜です。サラダやナムルに加えることで、爽やかな風味を楽しむことができます。また、冷製パスタや冷やし中華の具材として使うことで、夏季にさわやかな食事を楽しむことができます。

さらに、トマトは加熱調理に適しており、そのうま味が増します。トマトを丸ごと焼いたり、スープにしたり、ソースにして料理にかけたりすることで、深い味わいを楽しむことができます。トマトはチーズとの相性も抜群で、トマトリゾットやトマトのチーズ焼きなど、多彩な料理に活用できます。美味しさと栄養を兼ね備えたトマト、ぜひ食事に取り入れてみてください。

収穫直前のトマト

2. トマトの栽培方法

トマトの栽培方法を正しく理解することは、美味しいトマトを収穫するために極めて重要です。正しい知識と手順に基づいて栽培することで、健康な植物を育て、収穫量を最大化し、病気や害虫のリスクを最小限に抑えることができます。適切な土づくり、植え付け、管理、収穫のスケジュールや技術を把握することは、トマト農家にとって成功の鍵となります。

トマトの栽培時期

トマトの栽培スケジュールは下記のとおりです。

表1:トマトの栽培スケジュール
作業
3 土づくり
4 植え付け
5 植え付け
6 植え付け
7 収穫
8 収穫

土づくり

トマトの栽培を始める前に、適切な土づくりが必要です。以下のステップを追って進めていきましょう。

日当たりと連作に注意

トマトは日光のよくあたる場所で育つのが最適です。また、できるだけナス科の植物との連作を避けるようにしましょう。

植えつけ2~3週間前

トマトの土作りは、植えつけの2~3週間前から始めましょう。堆肥2kg/㎡と苦土石灰100g/㎡を土に混ぜ、よく耕して土づくりを行います。

植えつけ1週間前

植えつけの1週間前には、配合肥料[8 - 8 - 8]などを100g/㎡に混ぜ込み、トマトの畝を作ります。畝の幅は約60cm、高さは20cmほどが適しています。また、マルチフィルムを張ることで雑草や泥ハネを防ぎ、病気の予防にも役立ちます。

トマトの植え付け

トマトの植え付けには以下のポイントに注意しましょう。

定植は最低温度が15度を上回るようになってから行います。寒冷期が戻る可能性のある4月上旬は気温に注意しましょう。若い苗は花蕾(第一花房)が見えてから植えると、着果が確実でバランスの良い成長が期待できます。支柱は苗から5㎝ほど離して立てます。畑の場合、株間を50cm以上空けると良いでしょう。

トマトの花

わき芽かき

1本仕立てがおすすめされています。わき芽は早い成長を見せるので、毎週チェックし、主枝に充分な栄養がいくように摘み取りましょう。花房がついている方を主枝とし、太くなったわき芽はハサミで切りましょう。

整枝・下葉取り

梅雨に入る前に、株元に近い古い葉を取り除き、風通しを良くすることで病気にかかりにくくなります。

着果促進

低温時の第一花房や高温時の着果を促進させるため、市販のホルモン剤を1~2輪咲いた花房に散布します。注意点として、2度がけや葉や生長点にかからないように注意しましょう。

摘果(大玉タイプのみ)

大玉タイプのトマトを栽培する場合、実を大きくするために1花房あたり4~5個の実を残し、開花後に実が膨らみ始めたら小さな実を摘み取りましょう。ミニタイプやミディタイプの場合は摘果は必要ありません。

水やり

トマトは比較的乾燥気味の管理を好む野菜です。プランターや容器栽培の場合、やや乾かし気味に管理し、夏場でも1日1回の水やりで十分です。夕方に葉先が少し萎れても問題ありません。

追肥

生育期間が長いため、適宜追肥を行います。トマトは吸肥力が非常に強いため、肥料の過剰使用に注意が必要です。元肥は控えめにし、長期間効く有機質肥料を使用し、追肥は少量ずつ与えることが重要です。

1回目の追肥は開花後に行います。その後の追肥は3段目や5段目の実が膨らむ頃を目安に行います。やりすぎには注意し、葉や茎が過剰に成長しないように調整しましょう。

収穫

収穫は開花後45~50日くらいで行います。真っ赤に熟した実から順次収穫しましょう。手で摘む場合、果梗の離層部に指を当てて優しく摘み取ります。果梗は他の実を傷つけないように短く切りましょう。

青いトマトの実

摘芯

最後まで安定して収穫を続けるために、主枝が支柱の高さに達したら、最上部の花房の上2枚の葉を残して主枝を摘み取りましょう。この方法により、バランスの取れた成長をサポートします。

3. トマト栽培によくあるトラブルと対策方法

これからトマトを栽培する方や、トマトの栽培のトラブルを解決しようとしている方は、栽培で発生するトラブルについて正しく理解する必要があります。ここからは、トマトの主要な病気について、病気の症状とそれに対処する方法について詳しく説明します。

萎凋病(いちょうびょう)

トマトの萎凋病の症状と対策方法について解説します。

症状

萎凋病は、高温の環境下で発生しやすい病気です。初めに、植物の一方の側の下葉が日中にしおれ、夜間に元に戻るという状態が見られます。このしおれは次第に上部に広がり、他の側の葉にも影響を及ぼし、葉色が黄色に変わっていきます。植物の成長は著しく遅れ、実の付きも悪くなります。病気の進行に伴い、早期にしおれや黄変した葉はしだいに枯れて落葉します。茎や葉柄の維管束は地際からしおれや黄変が始まる位置まで褐変し、硬く木化します。根の初期段階では外観的な変化はわずかで、維管束の一部が褐変する程度ですが、進行すると根全体の維管束に褐変が広がります。

対策方法

この病気を軽減するためには、いくつかの対策があります。

耐病性台木の使用

耐病性の台木(例: ガードナー、グリーンガードなど)を使用することで、病気の発病を軽減できます。病原菌の蓄積を防ぐために、発病が繰り返されないように注意が必要です。特に、トマトを連作する場合には、土壌を消毒する必要があります。

土壌消毒

土壌中に病原菌が蓄積するのを防ぐために、土壌消毒が有効です。ハウス栽培では太陽熱消毒が効果的であり、他にも蒸気や熱水による土壌消毒が行えます。土壌への有機物の施用による土づくりも、病気の発生と被害を軽減するのに役立ちます。

薬剤の使用

薬剤を使用した土壌消毒も一つの選択肢です。クロルピクリンくん蒸剤(クロピク80、クロピクテープ、クロルピクリン錠剤)、バスアミド微粒剤、キルパーなどが利用されます。ただし、農薬の使用には注意が必要であり、登録のある農薬を正確に選択し、使用量を調整することが重要です。

灰色かび病

トマトの灰色かび病の症状と対策方法について解説します。

症状

灰色かび病は、トマトの様々な部位に発生する病気で、特に果実への被害が著しい特徴があります。育苗期や定植後の幼植物では、葉、茎、葉柄に発病し、葉には褐色の大型円形の病斑が生じ、茎や葉柄には暗褐色の水浸状の円形病斑が現れます。病勢が激しい場合、被害部より上の茎や葉が枯れてしまいます。成育後期には、花弁、果梗、果実にも発生し、古い花弁やがく片が褐変し、果実に病原菌が侵入します。開花前後の果実では褐変枯死し、落果することがあります。親指大以上の果実では、水浸状の暗褐色の小さな円形病斑が形成され、次第に拡大して果実を軟化させて腐敗させます。葉や茎には被害花弁や果梗が落下し、葉や枝の分岐部などに付着すると、その部分から発病し、灰褐色のかびを密生し、たたくと胞子が飛散します。収穫間際の果実には、径1〜2mmの黄白色の中心がある小さな斑点(ゴーストスポットとも呼ばれる)が多数生じることがあります。

予防方法

灰色かび病の発生を予防するためには、以下の対策が重要です。

施設の管理

灰色かび病は施設栽培に特有の病気であり、冬季に多重被覆栽培を行うと、施設内が多湿で太陽光線が不足する環境が整い、発病しやすくなります。密植やチッソ過多な状態も発病を助長します。施設栽培の場合、十分な換気と乾燥条件を確保し、発病初期に予防措置を施すことが大切です。

花弁の除去

花弁に付着した病原菌から感染が始まり、花弁を取り除くことで被害を軽減できます。

紫外線カットフィルムの使用

ハウスなどで紫外線カットフィルムを使用することで、発生を抑制することができます。

防除薬剤の利用

トマトやミニトマトに対する防除薬剤として、ミギワ10フロアブル、ケンジャフロアブル、ピカットフロアブル、ベルクートフロアブル、パレード20フロアブル、ネクスターフロアブル、セイビアーフロアブル20、アフェットフロアブル、ピクシオDF、ファンタジスタ顆粒水和剤、ニマイバー水和剤などが利用できます。また、生物薬剤としては、エコショット、バイオワーク水和剤、アグロケア水和剤が使用できます。薬剤の散布においては、同一薬剤の連続使用を避け、異なる薬剤を交互に使用することが薬剤耐性菌の発生を防ぐために重要です。

青枯病

トマトの青枯病に関する症状と対策方法について解説します。

症状

青枯病は、典型的な高温期に発病する病害で、露地栽培では梅雨明けごろ、施設栽培では春から早い段階で発生します。この病気の特徴は、初期に全身の茎や葉が、晴天の日中に一斉にしおれ、夜間には回復する状態を数日間繰り返すことです。しかし、やがて回復せずに茎や葉がしおれていきます。他の萎凋性の病気とは異なり、青枯病の進行は非常に速く、茎や葉が黄化することなく緑色を保ったまましおれるため、この名前がつけられました。しおれた茎や葉は後に褐変し、枯死します。萎凋した茎の地際部の維管束は褐変しますが、萎凋病ほどはっきりとしないことがあります。茎の維管束を切り口から押すと、膿のような病原細菌の泥が出てきます。切り口を水中に入れると、細菌の泥が筋状に流れ出るため、これによって青枯病などの糸状菌による萎凋性病気と区別することができます。

予防方法

青枯病の病原菌は土壌伝染性で、ナス科の作物だけでなく、シソ、キュウリ、ダリアなど多くの作物に感染する多犯性の病原菌です。この病原菌は土壌中に残り、伝染源となります。したがって、被害残さを取り除くことが非常に重要です。耐病性の台木(キングバリア、Bバリア、グリーンフォース、グリーンセーブなど)を使用した接ぎ木栽培は、被害を軽減するための効果的な方法です。

発病圃場では、芽かきなどの管理作業に特に注意が必要です。ハサミやナイフなどが感染源となる可能性があるため、これらの道具を使用する前に十分に消毒することが重要です。

土壌消毒剤として、トマトやミニトマトに対しては、クロルピクリンくん蒸剤(クロールピクリン、クロルピクリン錠剤)、バスアミド微粒剤が使用できます。

4. まとめ

トマト農家にとって、栽培や病気管理の知識は収益の安定や競争力を保つために重要です。高品質のトマトを提供することで、市場の需要が増え、消費者からの信頼も得られます。要するに、適切な知識とスキルは、成功するトマト農家の必須条件であり、持続的な農業経営の土台となるのです。

この記事の監修者
田中和男
田中 和男
卒業後、地元のJAに就職し30年以上農機センターで勤務。 定年退職後、自ら中古農機事業を立ち上げて地元を中心に販売・買取やレンタルを行う。 農業機械1級整備士の資格あり。 自らも兼業農家として実家の農業を50年近くやっています。