スマート農業って?メリット・デメリットと今後の課題

スマート農業って?メリット・デメリットと今後の課題

2023.05.31
目次
  1. スマート農業とは?
  2. スマート農業の目的
  3. スマート農業が注目される背景
  4. スマート農業の将来性
  5. スマート農業の導入のメリット
  6. スマート農業の導入の課題
  7. スマート農業を支援してくれるサービス
  8. スマート農業を支援してくれる企業

1. スマート農業とは?

スマート農業とは、情報通信技術(ICT)やAI(人工知能)などの先端技術を活用し、農業生産の効率化や高品質化を図る新しい形の農業のことを指します。具体的には、ドローンによる作物のモニタリングやAIによる生育予測、自動化ロボットによる収穫など、テクノロジーの力を最大限に活用しています。たとえるなら、スマートフォンが私たちの生活に革新をもたらしたように、スマート農業も農業の世界に大きな変革をもたらすことを目指しています。

スマートフォンのアプリで管理

2. スマート農業の目的

スマート農業の主な目的は、生産性の向上と農作物の品質向上を同時に達成することです。これは、日本の農業が直面しているいくつかの課題、例えば労働力不足、高齢化、生産コストの上昇などを解決するための重要な手段となっています。さらに、スマート農業は、環境への配慮や持続可能な農業生産を可能にするという点でも大きな期待が寄せられています。

3. スマート農業が注目される背景

スマート農業が注目される背景には、グローバルな人口増加と食糧需給のバランスを考えると、より多くの食糧を効率よく、かつ持続可能な方法で生産する必要があるという課題があります。さらに、気候変動や天候の不安定さも農業の大きな課題となっており、それらを乗り越えるためには、ICTやAIのような新しい技術を活用した新たな農業の形が求められています。例えば、AIを使った天候予測は、天候の変動に対応するための新しい農作物の管理方法を提供することができます。

4. スマート農業の将来性

スマート農業は、現在はまだ発展途上の段階にありますが、その将来性は非常に大きいと言われています。テクノロジーの進化に伴い、より精密な農業、環境に配慮した新しい栽培技術、より高度な監視システムといった先進的なアプローチが開発されつつあります。

インターネット・オブ・シングス(IoT)の技術は、農場の遠隔監視や水供給の自動化など、農作業の正確さと便利さを向上させるための重要なツールとなっています。IoTセンサーは、土壌の温度や湿度を測定し、植物や家畜の追跡を行うなど、さまざまな活動を行います。また、IoT技術とドローン、ロボット、コンピュータ画像処理を組み合わせた革新的なセンサーソリューションが開発されており、農作業の敏捷性、精度、精密さを高めています。

また、農業ロボットも大いに活用されています。これらのロボットは、果物の収穫や種まき、除草など、農場での反復的なタスクを自動化します。農業ロボットによって、農家は全体的な生産性を向上させることに集中することができ、遅い農作業や人間によるミスを心配する必要がありません。

農業ロボット

AIの導入により、農家は畑の状態についてリアルタイムの情報を得ることができ、より積極的に対応することができます。AIは天候データ、収穫量、価格の予測などの予測的な洞察を提供し、農家が情報に基づいた意思決定を行うのを支援します。また、AIと機械学習(ML)アルゴリズムは、植物や家畜の病気の早期発見と対策を自動化します。

さらに、ドローンは農場の生産性を向上させ、コストを節約するための有効な手段となっています。ドローンはカメラを搭載しており、遠くの農地を航空撮影し、肥料や水、種、農薬の最適な使用を促進します。家畜の追跡や「ジオフェンシング」(特定の地理的範囲内で動物の動きを制限する技術)にも使用されます。

5. スマート農業の導入のメリット

  1. 生産性の向上:スマート農業技術は、作業の自動化と最適化により、農業の生産性を大幅に向上させます。例えば、IoTデバイスやAIは、農場の状況をリアルタイムでモニタリングし、それに基づいて適切に対応できるようになります。
  2. 効率性の向上:スマート農業技術は、作業の自動化と最適化により、農業の効率性を大幅に向上させます。例えば、農業ロボットは、作物の収穫や植付けなどの時間と労力を必要とするタスクを自動化します。
  3. 資源の最適化:スマート農業技術は、農業のリソースを最適に利用します。例えば、ドローンは、肥料、水、種、農薬の適用を最適化するためのデータを収集します。
  4. 持続可能性の向上:スマート農業は、資源の最適な利用と環境への影響の最小化を通じて、農業の持続可能性を向上させます。
  5. リスクの低減:スマート農業技術は、リアルタイムのデータと予測に基づいて意思決定を行うことで、農業のリスクを低減します。例えば、AIとMLは、植物や家畜の病気を早期に検出し、適切な対策を施すことを可能にします。
農業用ドローン

このように、スマート農業は、農業の効率性、生産性、持続可能性を大幅に向上させ、リスクを低減することができます。これらは、今後の農業の発展においてとても重要です。

6. スマート農業の導入の課題

  1. 技術的な課題:スマート農業技術の導入と利用は、一定レベルの技術的な知識とスキルを必要とします。新しい技術に慣れるのに時間がかかる場合や、専門家の技術サポートが必要となる場合があります。
  2. コスト:スマート農業技術の導入は、初期投資として高額なコストがかかる場合があります。特に小規模な農場にとって、大きな負担となる可能性があります。
  3. データセキュリティとプライバシー:スマート農業技術は、大量のデータを収集、分析、共有します。これは、データセキュリティとプライバシーの問題を引き起こす可能性があります。
  4. インフラの制約:特に農村地域では、インターネット接続や電力供給などの基本的なインフラが不十分で、スマート農業技術の導入と運用を制限する可能性があります。

このような課題を解決するためには、適切な教育と訓練、財政的な支援、データセキュリティとプライバシーの保護、そして基本的なインフラの強化が必要となります。

7. スマート農業を支援してくれるサービス

e-kakashi

https://www.e-kakashi.com/

SoftBankによって提供されている農業AIブレーンです。2015年から提供が開始され、2021年には大幅なリニューアルが行われました。「e-kakashi」は、IoTセンサーを活用して田畑やビニールハウスなど屋内外の農場から環境データを収集し、植物科学の知見を取り入れたAIで分析。その結果をもとに最適な栽培方法を提案し、農業従事者を支援するサービスです。これは、人手不足が深刻化している農業現場での課題解決を目指し、農作業の効率化や生産量・品質の向上、技術継承などを実現するためのものです。

リニューアルされた「e-kakashi」は完全独立駆動式で、端末にソーラーパネルとニッケル水素電池を搭載しています。これにより、電源の有無に左右されずに任意の場所に端末を設置し、農場の環境データの収集が可能になりました。また、最適な栽培方法の提案や環境データの分析、各種データ管理などを行う4種類のアプリが新たに提供され、利用者はスマートフォンやパソコンでこれらのデータを簡単に確認できます。

価格については、端末代は税抜きで99,800円(税込みで109,780円)、接続料は税抜きで980円/月(税込みで1,078円/月)、そしてクラウド利用料が必要です。なお、農作物や栽培方法によっては、端末に加えて温湿度や二酸化炭素濃度などを計測するセンサーの購入が必要となる場合があります。

「e-kakashi」は国内外での使用を見据えており、海外では関連機関と連携し、持続可能な農業の実現に向けた研究や実証実験、社会実装を推進する取り組みも行っています。

アグリマルチセンシングSaaS 圃場管理クラウド

https://www.fujitsu.com/jp/group/kfn/services/list/hojyo/

「アグリマルチセンシングSaaS 圃場管理クラウド」は、農業現場で利用できるクラウドベースのサービスで、農場管理をより効率的に行うための支援を提供します。このサービスでは、多地点のセンシングデータを自動的に収集・蓄積し、そのデータをリモートで閲覧することが可能です。収集したデータはグラフ化され、必要な計算式や閾値を設定することで、閾値を超えた場合にEメールでアラーム通知を行います。また、多数のユーザーのセンシングデータを確認でき、営農指導ツールとしても利用することができます。

基本機能としては、ダッシュボード機能とアラーム機能があります。ダッシュボード機能は、データ可視化表示により一目で全体像を把握することが可能で、グラフや画像でわかりやすく、温度・湿度、風向・風量、雨量、土壌の状態などを表示します。アラーム機能は、事前に閾値を設定してEメールでアラームを通知することができます。これにより、病害虫の防除時期や収穫適期、灌水時期などの重要なタイミングを逃すことなく対応することが可能になります。

さらに、グループ管理機能もあり、各ユーザーに対して共有されるスケジュールを登録でき、複数の現場を同時に表示して概況を確認することができます。収集した温度・湿度などの環境データをリモートでクラウドに蓄積し、グラフによる可視化、閾値通知、過去データの振り返りなど、生産現場における環境データの利活用をトータルにサポートします。センシング項目はカスタマイズ可能で、例えば温度/湿度、土壌温度、土壌水分量、EC、日射量、雨量、風向風速などを自動収集できます。

料金体系としては、基本サービス費用が月額2,000円(管理者1名+メンバー1名+センシングポイント1カ所)です。導入初年度にはスタートアップサービスが20,000円から、そして基本サービス費用が24,000円からとなります。翌年度以降は基本サービス費用が24,000円からとなります。

8. スマート農業を支援してくれる企業

農業総合研究所

https://smartagri-jp.com/smartagri/3159

この記事は、農業総合研究所(農総研)と富山県の農事組合法人ゆかり営農組合、富山中央青果との間で進行している協力について報告しています。特に富山県のJA魚津で生産される「白ネギ」に焦点が当てられています。富山県では他県と違い、ネギの青い部分を好んで食べる文化があり、そのため県内の産地では青い部分と白い部分がほぼ半分ずつになるよう土寄せの工夫がされています。農総研はこれを評価し、「青と白が仲良く半分ずつになっている」という意味を込めて「仲良しろねぎ」という名前で販売しています。

また、魚津市のゆかり営農組合は、経営面積46haのうち1.5haで白ネギを栽培し、その一部を「仲良しろねぎ」として出荷しています。農総研との取引を始めた利点として、結束と袋詰めといった作業を市場で行ってもらえるようになり、生産に力を入れられるようになったこと、さらに契約価格が決まっているため価格が安定し、経営計画を立てやすくなったことが挙げられています。

富山中央青果は、地方の卸売会社として存続できるかどうかの危機感を抱いています。スーパーマーケットがセンター機能を強化し、青果物の集荷と各店舗への出荷を一元的に行うようになったことで、地方の市場の存在意義が問われています。この状況を脱するために、農総研と提携し、市場に集まる青果物の付加価値を上げることを目指しています。

その一環として、富山中央青果は加工場を整え、農家がこなしてきた結束や袋詰めなどの調製作業を代行しています。全国の産地とのつながりと、こうしたインフラを備えることが市場流通の強みとなっています。農総研と提携した理由について、安井社長は「直売のノウハウや個人生産者とのつながり方、IT技術導入、輸出への挑戦、ブランド化のセンス、農業への情熱に期待してのことです」と語っています。富山県は野菜の産出額が全国で最も低いですが、農総研との提携を通じてその状況を改善しようとしています。

この記事の監修者
田中和男
田中 和男
卒業後、地元のJAに就職し30年以上農機センターで勤務。 定年退職後、自ら中古農機事業を立ち上げて地元を中心に販売・買取やレンタルを行う。 農業機械1級整備士の資格あり。 自らも兼業農家として実家の農業を50年近くやっています。