キャニコムは、1995年から乗用草刈り機を販売している製造会社です。
初期のころは後輪駆動の草刈機を果樹農家用に作っていましたが、2001年に業界初の4輪駆動車の販売を開始しました。
それまで果樹農家が主な販売先でしたが、4輪駆動車を武器にレンタル事業者への販売を開始し販路を広げていきました。
現在ではキャニコムの乗用草刈機の主流は4輪駆動車になり、傾斜地などにも使用範囲が広がっています。
本記事では、4輪駆動乗用草刈機の分野で高い評価を受けているキャニコム製乗用草刈機「まさお」について詳しく紹介します。
その歴史や主要なモデル、特徴に加え新車や中古車の価格情報、買取り価格、他社製品との比較など、幅広い視点から「まさお」を検証しています。
草刈機に関心のある方、乗用草刈機の購入を検討している方に向けて、「まさお」の魅力を伝えるとともに、選び方や購入時のポイントを解説します。
(注1:記事中のエンジン出力はグロス表示です。)
(注2:販売開始、終了年は明確な資料がなくある程度推測に基づいています。)
キャニコム乗用草刈り機「まさお」機種構成
キャニコムのまさおシリーズは主に刈刃ベルトが座席下にあるシリーズ、F1まさおシリーズ、HEYまさおシリーズ、家族のまさおシリーズ、フルーティーまさおシリーズがあります。ここではシリーズごとに解説します。
◾️刈刃ベルトが座席下にあるシリーズ
引用元:写真はキャニコムホームページより
キャニコムで乗用草刈り機が誕生したころの機種CLM1304~CM1801とCM2205がこのシリーズになります。
その特徴は、刈刃ベルトが他社と同じように座席下にあることと後輪駆動が採用されていることです。
長らくこのシリーズの開発は行われていませんでしたが、草刈機開発の原点に帰って果樹農家向けとして2022年に新機種が開発されました。
それは「リンゴまさお」という愛称にも表れています。
<エンジンバリエーション>
エンジンバリエーションは13馬力から始まって最新モデルでは22馬力と出力が大きくなっています。
<刈刃ベルトが座席下に配置されている>
刈刃駆動ベルトはオーレックなど他社と同じように座席下に配置されています。メンテナンス性や刈高さは犠牲になりますが、軽量化や価格に貢献しています。
リンゴまさおでは、ベルト交換のしにくさを改良するためエンジンを持ち上げる機構を採用しました。
注1)CM2101~2104は4WD、4WS、ペダル付き
注2)CM2205には走行ペダル付き
<乗用草刈機の中古相場と買取価格>
代表的な型式は、CLM1304、CM1801、CM2205となります。
中古の販売価格の相場は市場に状態によってかなり開きがあります。販売中のCM2205を除けば1~30万円くらいまでです。買取価格はおおよそ10万前後です。
型式 | 販売開始年 | 販売終了年 | E/G出力(PS) |
CLM1304 | 1994 | 2001 | 13 |
CM1602 | 1998 | 2000 | 16 |
CM1603 | 1999 | 2001 | 16 |
CM1305 | 1999 | 2000 | 13 |
CM1801 | 2000 | 2000 | 18 |
CM2102 ~CM2104 |
2001 | 2010 | 21 |
CM2205 | 2022 | 販売中 | 22 |
◾️後輪駆動プロペラシャフトシリーズ
前モデルの刈刃駆動が座席下のベルト駆動だったのに対して、刈刃がシャフト駆動にかわり走行ペダルが採用されました。
<プロペラシャフト駆動の採用>
刈刃を駆動するのにプロペラシャフトを採用したことで刈高さを高くすることができます。また、ベルト交換をリヤ側からできるようになりメンテナンス性が向上しました。
ベルトが床下にある構造では刈高さを変えるとベルトの相対位置がずれてベルトの寿命に影響を与えていましたが、ベルトが所定の位置で設定されるため寿命がのびます。
<走行ペダルの採用>
走行操作にペダルが採用され安全性と操作性が向上しました。レバー操作は一定の位置で固定でき変速操作が不要な時は楽なのですが、変速操作が頻繁な時には不便です。
不意な障害物などを避けるために停止したい時は手での操作では対応が難しく危険でしたが、ペダル操作では足を離せばペダルが戻り車両が停止するので安全です。
注)CM141,CM142はペダル未装着
<代表的な機種と中古相場・買取価格>
代表的な機種は、22馬力エンジンを搭載したCM220となります。このシリーズはすべて販売終了となっています。販売価格は、市場に出回るものが少なくやはり10万円~30万円くらいです。
中古車選びには、最高速度や軽トラックにあぶみで簡単に積み下ろせるかなども確認しましょう。
機種 | 生産開始年 | 生産終了年 | E/G馬力(PS) |
CM220 | 2005 | 2009 | 22 |
CM221 | 2005 | 2009 | 22 |
CM210 | 2005 | 2010 | 21 |
CM181 | 2005 | 2010 | 18 |
CM211 | 2006 | 2010 | 21 |
CM212 | 2007 | 2010 | 21 |
CM182 | 2008 | 2010 | 18 |
CM212K | 2009 | 2009 | 21 |
CM182K | 2009 | 2010 | 18 |
CM141 CM142 |
2009 | 2018 | 14 |
◾️AWD MASAO
このシリーズは4輪駆動のCMX222と後輪駆動のCM223の2型式です。
4輪駆動と2輪駆動のデザインの統一、刈刃の無工具交換、刈高さが高いのがこのシリーズの特徴になります。
<フルカバーされた統一デザイン>
後輪駆動と4輪駆動のデザインが統一化され、枝などの引っかかりが少ないような形状となっています。樹脂を多用して、機能美と軽量化を実現しています。
後輪駆動が4輪駆動と統一化されたため、耐久強度が4輪駆動なみに強化されました。
<刈刃の無工具交換>
刈刃が摩耗したときに従来であれば工具が必要でしたが、無工具で交換が可能となりました。
<刈高さ200mm>
従来機での刈り取り高さは100mm程度で高刈りができず密集した草刈が困難でしたが、密集した草でも刈取りが可能なりました。また、草を根こそぎ刈らずにある程度草を残す刈り方をする草生栽培にも対応可能です。
刈高さが低いと石飛や土を削ってしまうようなことが発生して刈刃が早期摩耗しますが高刈りすればそれを防止できます。
<代表的な機種と中古相場>
代表機種は4WDのCMX222です。オークションサイトでは30~60万円で取引されています。
型式 | 生産開始年 | 生産終了年 | E/G馬力(PS) |
CM223 | 2007 | 2012 | 22 |
CMX222 | 2007 | 2012 | 22 |
◾️F1まさおシリーズ
引用元:写真はキャニコムホームページより
F1まさおシリーズは、4輪駆動、22馬力エンジンを中心に同じデザインで多数のエンジンバリエーションと後輪駆動、4輪駆動の2つの走行方式があります。
前モデルより全高が低く抑えられました。
<突起物の少ないデザイン>
前モデルよりさらに枝など引っ掛かりにくくした形状となり、リヤカバーもフルカバーで草の堆積を防止します。
<低重心、低全高>
傾斜地作業での転倒防止のため低重心とし、枝下などに入りやすいように全高さを40mm下げてあります。
<エンジンバリエーション>
エンジンバリエーションは22馬力から25馬力までシリーズ化されています。使用場所や使用頻度によって機種を選びます。
<選べる後輪駆動・4輪駆動>
各エンジン仕様に対して後輪駆動、4輪駆動を選べます。型式のCMXが4輪駆動車でCMが後輪駆動車です。CMX253は2連刈刃のワイド仕様です。
<代表的な機種と中古相場>
代表型式は開発のベースとなったCMX224です。中古価格はオークションサイトで30万~60万円でしょうか。
型式 | 販売開始年 | 販売終了年 | E/G馬力(PS) |
CMX224 | 2010 | 2011 | 22 |
CM225 | 2010 | 2011 | 22 |
CM184 | 2010 | 2011 | 18 |
CM226 | 2011 | 2013 | 22 |
CMX227 | 2011 | 2013 | 22 |
CM185 | 2011 | 2013 | 18 |
CMX186 | 2011 | 2013 | 18 |
CM250 | 2012 | 2013 | 25 |
CMX251 | 2012 | 2013 | 25 |
CM252 | 2012 | 2013 | 25 |
CMX253 | 2012 | 2013 | 25 |
◾️HEY まさおシリーズ
引用元:写真はキャニコムホームページより
F1まさおシリーズの後継機種になります。
新たに14馬力エンジン仕様が追加されエンジンメーカーも変更になりました。外観形状はほぼ変わりせんが、リヤカバーにHEY MASAOのロゴが入っています。
型式 | 販売開始年 | 販売終了年 | E/G馬力(PS) |
CM2201 | 2013 | 2023 | 22 |
CMX2202 | 2014 | 2023 | 22 |
CM2501 | 2014 | 2023 | 25 |
CMX2502 | 2014 | 2023 | 25 |
CM1803 | 2014 | 2023 | 18 |
CMX1804 | 2014 | 2023 | 18 |
CM2503 | 2014 | 2023 | 25 |
CMX2504 | 2014 | 2024 | 25 |
CM1401 | 2018 | 2023 | 14 |
CMX1402 | 2018 | 2023 | 14 |
CMX2402 | 2017 | 2018 | 24 |
CM2403 | 2018 | 2018 | 24 |
CMX2404 | 2019 | 2024 | 24 |
◾️家族のまさおシリーズ
引用元:写真はキャニコムホームページより
公道を走れる最上級モデルの小型特殊自動車として開発されました。丸みを帯びた前モデルより直線的なデザインに変更され樹脂も鋼板にかわり、ガードパイプが追加されました。
刈刃昇降は電動化され、つまみを回すと刈高さが変わります。エンジンも防塵対策としてサイクロンエアクリーナが採用されました。
この変更により、より頑丈で使いやすくなりました。
型式 | 販売開始年 | 販売終了年 | E/G馬力(PS) |
CMX2506 | 2015 | 販売中 | 25 |
CM2203 | 2015 | 2021 | 22 |
CMX2508 | 2022 | 販売中 | 25 |
CMX2508は太陽光発電所をターゲットの2連刈刃で刈幅が1234mm、さらに刈刃が120mmスライドして際刈りがしやすくなりました。
◾️最新モデルのフルーティーまさおシリーズ
引用元:写真はキャニコムホームページより
フルーティーまさおシリーズはHEIマサオシリーズをフルモデルチェンジしたシリーズです。2024年にHEYまさおシリーズの販売がなくなり、フルーティーまさおシリーズに移行しました。
現在バリエーションが3型式と少ないですが、これから充実していくと推測されます。
<シャープなデザインへ一新>
デザインの一新で後部がドアタイプに変更されたのでメンテナンス性が改善されました。
<最低地上高のアップ>
リヤタイヤが大きくなり最低地上高が高くなりました。これにより、障害物乗り越えが容易となり、いわゆる亀さん状態になりにくくなっています。
<サスペンションの採用>
CMX2408にはフロントサスペンションが採用され乗り心地を改善しています。このサスペンションは車両が沈みこむ構造ではないので刈高さに影響を与えにくい構造です。
<代表的な機種と中古相場>
販売が開始されたばかりで中古市場はまだ出来上がっていません。
まさおシリーズの販売価格等の諸情報
今まで主要緒言には触れずに説明しましたが、ここで改めて現在販売されている機種の主要緒言と販売価格をまとめてご紹介します。
機種 | CM2205 | CM2207 | CMX2206 | CMX2408 | CMX25 | CMX2508 |
愛称 | リンゴ まさお |
フル-ティ- まさお |
フル-ティ- まさお |
フル-ティ- まさお |
家族の まさお |
Sunsun Masaosun |
車両重量 (kg) |
335 | 330 | 350 | 370 | 395 | 450 |
全長 (mm) |
1920 | 1885 | 1885 | 1885 | 1850 | 1850 |
前幅 (mm) |
1040 (1100) |
1020 | 1020 | 1020 | 1020 | 1340 |
全高 (mm) |
850 | 920 | 920 | 920 | 1015 | 1015 |
E/G出力 (PS) |
22 | 22 | 22 | 24 | 25 | 25 |
刈高さ (mm) |
10~75 | 0~150 | 0~150 | 0~150 | 0~170 | 0~120 |
刈幅 (mm) |
915 (975) |
975 | 975 | 975 | 975 | 1234 |
駆動方式 | HST 後輪駆動 |
HST 後輪駆動 |
HST 4輪駆動 |
HST 4輪駆動 |
HST 4輪駆動 |
HST 4輪駆動 |
前進速度 (km/h) |
高速0~13.2 低速0~7.4 |
高速0~14.2 低速0~8 |
高速0~14.2 低速0~8 |
高速0~14.2 低速0~8 |
高速0~13.8 低速0~7.7 |
高速0~13.8 低速0~7.7 |
登板性能 (度) |
15 | 15 | 25 | 25 | 25 | 25 |
価格 (千円) |
968 | 1100 | 1298 | 1430 | 1705 | 1925 |
現在販売されている機種のみまとめましたが、エンジン出力と付加機能の違いで価格は変動します。
他の機種や世代が違ってもこの傾向にあります。
まとめ
キャニコムの草刈り機は今後も技術革新を経て、草刈分野の発展に大きく貢献していくでしょう。
選び方や今後の展望を理解し、自分のニーズに合った乗用草刈り機を選択することが、より効率的で持続可能な草刈作業に繋がります。
キャニコムは「読者が選ぶネーミング大賞」に連続で選出されるようにファンが多く、お客様の要望を取り入れた新機能、新機種の開発にも熱心です。
キャニコムの車両は他社に比べ価格が高めに設定されていますが、4輪駆動車はほぼ独占状態となっています。
4輪駆動車と共通設計された後輪駆動車は耐久性が高くなっています。後輪駆動のオーレック、4輪駆動のキャニコムといった棲み分けが自然発生的に上がっている模様です。アテックスもそれに割って入ってきています。
また、最近は乗用草刈機だけでなくラジコン車やロボット草刈機なども開発されてきていますので機種選定の際にはメーカーでパンフレットを取り寄せたり、JAや販売店でアドバイスをもらいながら選びましょう。
中古の乗用草刈機の買取をお願いしたくても、相場が分からなくて不安な方は多いでしょう。
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さまざまな業者を比較することで、相場が分かるはずです。