農業のキャリアパス

アグリビジネスで未来を拓く!農業のキャリアパスと新しい波

2023.10.20

農業(アグリカルチャー)と事業(ビジネス)を組み合わせてつくられた造語である「アグリビジネス」の世界は、日々進化し続けています。

農業従事者がアグリビジネスで成功するには、多岐にわたるスキルを持ち、多様な課題に対応できる力を身につけることが不可欠で、その展開の行先にはテクノロジーの利用が欠かせない要素となってきております。

キャリアパスの形成、テクノロジーの利用、持続可能な農業の実現、そして次世代を担う農業教育における現状と課題。

農業に魅力とやりがいを感じ、キャリアチェンジをして参入する人々が増えている中、これらのテーマは、現代の農業が直面する多くの課題を包含しており、参入への動機やプロセス、そしてスキルと経験をどのように農業に活かしていくかが重要なテーマとなっています。

この記事では、農業のキャリアパスと多くの農業従事者が新しい可能性に目を向けているアグリビジネスの可能性について、具体的かつ実践的な情報を提供します。

目次
  1. アグリビジネス・キャリアパスの新しい未来
  2. アグリビジネスの未来の可能性を示す4つの展開
  3. アグリビジネスとテクノロジーの未来
  4. まとめ

アグリビジネス・キャリアパスの新しい未来

農業の基本的な作業はもちろん大切ですが、アグリビジネスにおけるキャリアパスは多岐にわたり、どのようにビジネスとして発展させ、持続可能な形で次の世代に引き継いでいくかが重要なポイントとなります。

特に、農業の持つポテンシャルを最大限に引き出し、新しいビジネスモデルが生み出されているアグリビジネスの現状では、農産物の生産から加工、販売、そして消費者に届くまでの一連のプロセスのに数多くのチャレンジの場があると同時に、農業を次世代へとつなぐ大切なバトンとして捉えることができるでしょう。

キャリアチェンジに成功する5つのポイント

農業への転職は、自然と共に働く喜びや、食と直結した仕事への関心、地域社会への貢献など、多くの魅力が詰まっています。

特に40代以上の方々が農業に興味を持つ背景には、ライフスタイルの変化や価値観のシフトが見られます。

では異業種から農業に新しく参入する時に意識すべきポイントをまとめてみました。

1. 自身の強みや興味は何か?

キャリアチェンジを成功させるためのプロセスは計画的であることが重要で、自身の強みや興味を理解し、それが農業のどの部分とリンクするのかを考察することからはじめるといいでしょう。

2. アグリビジネスに必要なスキルをセットする

必要なスキルや知識を身につけるための学びを計画的に行います。

これには、農業スクールの受講や、農家でのインターンシップなどが考えられます。

地域や作物、農業の形態によっても必要なスキルセットは異なります。

3. 自身の理想形を明確に

自分がどのような農業を行いたいのか、どの地域で活動したいのかを明確にし、その方向性に合った情報収集とネットワーキングを進めていくことも大切です。

キャリアチェンジは容易な道ではありませんが、しっかりとした計画と行動、そして情熱があれば、きっと新しい道が開けるでしょう。

4. スキルと経験を活かしたキャリア形成

これまでのキャリアで培ったスキルや経験をアグリビジネスにどう活かすかが大きな鍵となります。

例えばマーケティングのスキルを持つ方は、農産物のブランディングや販売戦略の立案に、ITのスキルを持つ方は、オンライン販売やデータ分析に、その力を発揮できるでしょう。

スキルと経験を活かしたキャリア形成をするためには、まず自分の持っているスキルが農業のどの部分で役立つのかを把握することが大切です。

5. これまでの人脈を活かす

異業種とのコラボレーションや新しいビジネスモデルの創出の機会も多いアグリビジネスにおいて、これまでのキャリアで培った人脈もいざという時に頼りにできる可能性があります。

農業に関わる多くの人と交流を持ち、新しい価値を共創する道を探ることも、スキルと経験を活かしたキャリア形成には欠かせません。

アグリビジネスでチャンスを掴む4つのルート

多くのキャリアが新しく生まれているアグリビジネスの現状は、農業に興味がありながら他の分野からは大きな参入障壁となっています。

しかし、さまざまな分野から農業に参入し、独自のビジネスを展開できたら、農業自体の活性化につながります。

では現実にアグリビジネスを展開していくためのポイントを、まとめてみましょう。

1. 農産物の直売所を運営

直売所では、農家が育てた新鮮で質の高い農産物を、消費者に直接手渡すことができるので、農家の顔と名前がしっかりと消費者に伝わる形となり、商品の背後にあるストーリーや農家の情熱を伝えることができるので、消費者はスーパーで売ってるような単なる農産物にはない商品に対する価値感や愛着が生まれます。

このような直接的なコミュニケーションを通じて、消費者は新しいファンになる可能性があり、リピート購入を行うだけでなく、SNSや口コミを通じて、その魅力を広く伝えてくれることにもつながります。

このことは、新しい顧客を引き寄せ、ビジネスを持続可能なものとして発展させる基盤となりうるので、農産物の直売所運営は、農家と消費者との強固な絆を築くステージとなり、アグリビジネス成功への第一歩となるのです。

2. 加工品や新商品の開発し、ブランディングする

農産物を新鮮なまま販売することはもちろん重要ですが、加工品や新商品を開発することで、消費者に新しい価値を提供することができると共に、収穫期間外でも安定した収益を得ることができるので、ビジネスの持続可能性を高めます。

また、新商品や加工品を地域の特産品としてブランディングすることで、その地域の魅力や特色を顧客に伝えることができ、地域の歴史や文化、風土に根ざした商品開発を行うことで、地域自体のブランド価値を向上させることができます。

これは、観光資源としても利用することができ、地域経済の活性化にも寄与します。

3. イベントやワークショップの開催

農業体験イベントやワークショップの開催は、農業と消費者を直接繋げることができ、顧客層を開拓することが可能となります。

農業の楽しさや大変さを実感してもらいつつ、農産物そのものの特性や地域の魅力を伝えることで、関係人口が増え、新しいビジネスチャンスや協働が生まれる可能性もあります。

また、SNSやウェブサイトを活用してイベントの様子を発信することで、イベントに参加できなかった人々にも情報を届け、地域のファンを増やすことにもつながる可能性があります。

4. 地域との連携

地域の人々や他のビジネスオーナーと協力し、共同でイベントを開催したり、新しい商品を開発したりすることで、一緒に地域を盛り上げることができます。

これは、単にビジネスを展開するだけでなく、地域全体の活性化にも繋がり、持続可能な農業の実現にも寄与します。

このようなキャリアパスを形成し、伝統的な農法と新しいアプローチが融合することで、農業は新しい時代を切り開いていく力となります。

アグリビジネスの未来の可能性を示す4つの展開

農業におけるキャリアパスを考える上で、アグリビジネスの可能性を最大限に引き出すためのスキルや知識の習得が欠かせません。

特に、40代以上の農業従事者の皆様にとって、新しい技術やビジネスモデルを学び、取り入れることは、農業の現場をさらに活性化させ、新しい価値を生み出す源となります。

それは農産物の生産だけでなく、マーケティング、ブランディング、販売戦略など、多岐にわたるスキルが求められます。

では、具体的にどのようなスキルが必要になってくるか見ていきましょう。

1. インターネットを使ったマーケティング戦略

例えば、オンラインマーケティングのスキルを身につけることで、インターネットを利用した直販やプロモーションを行うことができ、より多くの顧客に対して、自らの農産物やサービスをアピールすることができます。

2. 環境に配慮し持続可能な生産

アグリビジネスにおけるキャリアパスを形成する上で、持続可能な農業を実現するための知識も重要となります。

環境に配慮した農業手法や、リソースの効率的な利用方法、地域社会との協働など、持続可能な農業を実現するためのアプローチを学ぶことで、未来の農業を支える強固な基盤を築くことができ、消費者も注目を集めることができたら、それらはすべて作物のブランド化へと繋げることも可能になってきます。

3. 品質管理や販売ルートの知識

農産物の加工や新商品開発においても、食の安全や品質管理に関する知識が不可欠です。

農産物をどのように安全に、かつ、高品質で加工し、消費者に提供するか。これらの知識を深めることで、農産物の価値をさらに高め、消費者からの信頼を勝ち取ることができます。

アグリビジネスは、単なる農産物の生産だけでなく、加工し、消費者に届けるまでの流通やそれらを支えるサービス業まで一連のプロセス全体をカバーしており、農家、卸売業者、小売業者、食品メーカーなど多くのプレイヤーが関与しているビジネスの構造を理解することも重要になってきます。

4. 地域コミュニティーとの連携

アグリビジネスの展開には、地域コミュニティとの連携も欠かせません。

地域の人々や他の事業者と協力し合うことで、より大きなシナジーを生み出し、地域全体の発展に寄与することができます。

地域と協働することで得られる情報やフィードバックは、ビジネスの方向性を見直す上でも非常に価値あるものとなります。

※シナジー(Synergy):複数のものが作用し合うことで、効果や機能を高めていくこと

アグリビジネスとテクノロジーの未来

アグリビジネスの領域において、テクノロジーの進化は目覚ましいものがあり、海外ではアグテック(Agriculture:農業とTechnology:技術の造語)と称される分野が確立され、従来、経験や知識、そして農家の勘に大きく依存していた伝統的な農業が、革新的な技術と融合し、その中核にはビッグデータとAI(人工知能)の活用が位置づけられています。

農業のデジタルトランスフォーメーション4選

中でも特に注目を集めているのが、農業のデジタルトランスフォーメーション(DX)です。

40代以上の農業従事者の皆様にとっても、新しいテクノロジーを取り入れることは、農業の効率化や新しいビジネスチャンスを生み出す大きな要素になるので、デジタルトランスフォーメーションが農業にもたらすインパクトは計り知れません。

1. IoT技術

IoT技術を利用したスマート農業では、センサーを使用して農地の温度や湿度をリアルタイムでモニタリングし、最適な栽培環境を作り出すことができ、これによって作物の品質を一定に保ちながら、収穫量を増加させることが可能となります。

2. AI技術

AI技術を用いて作物の病害を早期に発見し、必要な対策を迅速に講じることができることにより、収穫量のロスを最小限に抑え、安定した生産を実現することができるのです。

また、AIを利用した収穫ロボットも登場しており、これにより人手不足が問題となる収穫期においても、安定した作業を継続することが可能となります。

3. ブロックチェーン技術

ブロックチェーン技術を利用したトレーサビリティの確保も、消費者に対する信頼を築く上で重要な要素となります。

ブロックチェーンを活用することで、農産物の生産から消費者に届くまでの過程を透明化し、安全な農産物を提供することができます。

4. オンラインプラットフォーム

オンラインプラットフォームを利用した直売所の開設も、新しい販路として注目されています。インターネットを利用して、農産物を消費者に直接販売することで、中間マージンを削減し、農家の収益向上と消費者へのリーズナブルな価格設定が可能となります。

テクノロジーがもたらすメリットとデメリット

テクノロジーの進化は、農業の現場に多くのメリットをもたらしていますが、一方で新しい課題も生み出しています。

3つのメリット

  1. 作業の効率化やコスト削減が挙げられます。
  2. データを基にした精密な農業も可能となり、より高品質な農産物を安定して生産することができるようになる。
  3. スマートフォンやタブレットを利用して、遠隔地の農地の状態をリアルタイムで把握し、必要な対策を講じることができるなど、テクノロジーを活用することで、従来は難しかった遠隔地での農業管理も可能となり、農家が直面していた多くの課題を解決する手段となる。

4つのデメリット

  1. 初期投資のコストが高い。
  2. また新しい技術を学ぶことに対する抵抗感。
  3. 導入後のトラブルシューティングに必要なスキルや知識が必要となります。
  4. 新しいテクノロジーに対する学習コストがハードルとなる。

テクノロジーの導入は、単なる作業の効率化だけでなく、農業全体の持続可能性や拡張性を高める要素ともなります。

しかし、その導入と運用には計画的なアプローチと、適切なサポート体制が必要となります。

これからの農業において、テクノロジーと共に歩む道を模索し、そのバランスを見つけることが重要となるでしょう。

まとめ

アグリビジネスの世界は、農業の伝統的な枠を超え、多岐にわたるスキルと知識が要求されるフィールドへと進化しており、農業従事者が直面する多様な課題と、それに対応するためのスキルセットについて深く探求してきました。

持続可能な農業の実現は、環境との調和を保ちながら、経済的な持続可能性も追求する必要があり、これらの多岐にわたるスキルセットを次世代の農業従事者にどのように教え、伝えていくかが、大きな課題となっています。

これらのテーマは、農業という産業が単なる「作物を育て、収穫する」活動だけではなく、ビジネスマネジメント、テクノロジー、環境保全、教育、そしてコミュニケーションといった多様な要素を含んでいることを浮き彫りにしており、これらの要素が複雑に絡み合いながら、農業が社会全体と関わり、発展していくプロセスを形作っています。

これからのアグリビジネスの発展は、新しい技術の導入、持続可能な方法での生産、そして新しい市場への展開など、多くの可能性を秘めていますが、それを支えるのは、多岐にわたるスキルセットを持ち、時代のニーズに応じて進化できる農業従事者と、彼らを支える教育体系となるでしょう。

これらの要素がうまく連携し、協働することで、より豊かで持続可能な未来の農業が実現していくことだと言えます。

この記事の監修者
名木イサム
名木 イサム
淡路島の農家の長男。舞台俳優として国内外の公演に参加。「藝術」の「藝」は「種を蒔き育てる」の意味で、「カルチャー」は「耕す」を意味するラテン語が語源だからして現在、実家でアグリカルチャー(農業)に向き合いながら執筆活動を展開中。