ドローン農薬散布5つのデメリット!圃場の救世主が示す未来とは?

ドローン農薬散布5つのデメリット!圃場の救世主が示す未来とは?

2023.08.18
目次
  1. ドローン農薬散布のメリット
  2. ドローン農薬散布のデメリット
  3. ドローンのメリットが無人ヘリとの比較で見えてくる
  4. まとめ

日本の農業界は高齢化が進む中、後継者不足や労働力の減少が深刻な問題となっています。
テクノロジーの進化により、農業に従事する人たちの課題に対する新しい解決策が登場しており、ドローンによる農薬散布はその代表例と言えるかもしれません。
しかし、新しい技術の導入には必ず課題が伴います。

この記事ではドローンが農業の生産性向上や労働力不足の解消にどのように貢献しているのか?そして突きつけられた課題は何なのかを考えてみたいと思います。

ドローン農薬散布のメリット

普段は人通りも少ない田舎の田んぼに作業着をきた農夫が6~7人が見守る中、一段とモーター音が高まると、やがて悠々と機体が浮上し、ヘルメットを被った若い二人が連携をとりながら無線で合図を送り合いつつ農薬散布する様子は、未来の農業の姿をありありと見せつけられ、大変頼もしく映りました。

まずはドローンを使った農薬散布のメリットを見てみましょう。

メリット1:効率的な散布

従来の農薬散布方法と比較してドローンは時速15kmで幅4mほどの散布が可能であるため、非常に高い効率性を持っています。
例えば、従来の手作業や動力噴霧器を使用した方法では、一般的に1ha(ヘクタール)の散布に1.5時間以上かかっていました。
しかし、ドローンを使用することで、その時間を30分弱に短縮することが可能になりました。
傾斜地の狭い圃場でも作業がしやすく、驚くべきことに10a(アール)の広さなら、ものの1分程度の飛行で散布を終えることができるのです。
また圃場間をスムーズに移動できるため、作業時間の大幅短縮につながり、生産性の向上にも貢献することができます。

メリット2:健康被害のない農薬散布

これまでは農業従事者自らの手で農薬を散布していましたが、ドローンを使うことにより、農薬の健康被害の心配を払拭してくれることになりました。
これは何物にも代え難いメリットになると思います。

メリット3:高い薬剤効果が得られる

農薬散布が急速に普及している背景には、その高い薬剤効果が挙げられます。
一定のスピードで、一定の高さから均等に農薬を散布することができるドローンは、必要な場所に必要な量を正確に散布させることができるので散布のムラを少なくし、圃場全体をカバーすることができます。

これにより従来の散布方法と比較して、ドローンは効率よく散布でき、薬剤の高い効果を発揮するのです。

メリット4:精密な散布が可能

ドローンは、GPSやセンサー技術を活用することで、正確で精密な散布を行うことが可能になりました。
これにより必要な場所に必要な分量の農薬を集中的に散布することも可能となり、無駄な散布を減少させることができるようになり、土壌や水源に農薬が流出するリスクを減少させることができます。

これにより、環境保護と農業の持続可能性の向上にも寄与することができます。

メリット5:薬剤の微粒化による効果の向上

一般的にドローンで散布する場合は微粒化された農薬で葉面に付着しやすく、薬品の効果を長期にわたって持続させることができます。
薬剤の微粒化は同時に作物の細胞に浸透する効果もあり、防虫効果も高まります。

メリット6:作物の品質向上とその経済的効果

ドローンによるによる精密な農薬散布は作物の品質向上させ、それが販売価格を向上させ、収益の増加につながることが期待されています。
実際にこのようにしてドローンでの散布を導入した農家からの感想として、圃場で採れたお米のねばりや食感など、品質の向上が見られたとの報告が寄せられてます。
農業従事者からすると、これらの例はドローン導入の最も大きなメリットと言えます。

また、病病害虫発生を抑止することで収穫量が増加させる可能性を含んでおり、ドローンの導入による初期投資を、さらに早期に回収することを見込んでます。

ドローン農薬散布のデメリット

高性能なドローンを導入するにあたって、一つ間違えると大事故につながることから、導入には大きなハードルが立ちはだかります。 実際に導入するにあたって、クリアすべき点について考察していきたいと思います。

デメリット1:ドローン導入に必要な初期投資金額は?

まず、農業用ドローンの導入に必要な初期投資は、今現在大体200~300万円程度とされており、ドローンの性能や機能によってその額は変動します。
高性能なものや、大規模な農地に適したものは、さらに高額になることもあり、この初期投資にかかる負担は、多くの農家にとって悩みの種になることでしょう。

さらに、頭が痛いのは、ドローンには保険代や機体のメンテナンスや部品の交換、ソフトウェアのアップデートなどの年次点検費用など、決して安くない維持費がかかるということです。
その額は一般的には年間で約20万円程度が必要とされており、さらに故障や事故のリスクも高く、それらが発生した場合の修理費用も考慮するとかなりの出費を覚悟する必要があります。

国や自治体の補助金制度を活用する

近年、農業の技術革新を推進するための補助金が増えてきており、ドローンの導入に関しても、一定の補助が受けられる場合があります。

例えば、令和5年8月25日(金曜日)締め切りで3次募集を始めたの『スマート農業機械等導入支援』では、補助率2分の一で、補助上限額は1500万円となります。
これらを利用することにより、初期投資の負担を大きく軽減することが可能になります。

デメリット2:ドローンの空中散布に必要な操縦訓練

ドローンを使った農薬の空中散布は、航空法や農薬取締法などの関連法令に基づいて実施する必要があります。 そして、この散布を行うためには、操縦者としての一定の訓練と実績が求められます。

具体的には、安全に散布を行うために「5回以上の空中散布の実績」を積むことが推奨されています。 これは、機体の重量が変化する状況下でも、安定した飛行と散布が可能であることを確認するためのものです。

デメリット3:補助者の配置

ドローンの空中散布には、補助者の存在が非常に重要です。
補助者は、飛行や散布の安全を確保するための役割を果たします。
具体的には、以下のような役割を担います。

  • 飛行範囲や散布範囲に第三者が立ち入らないように注意喚起を行う。
  • 飛行や散布の状況、気象状況などを監視し、操縦者に必要な助言を提供する。

また、飛行場所に第三者が立ち入った場合、補助者の役割として、散布や飛行を中止することが求められます。

デメリット4:ドローン農薬散布の手続きとその複雑さ

農業の現場でのドローンの利用には多くの手続きが伴います。
主な登録や手続きは以下の通りです。

機体登録

ドローンを使って農薬を散布するためには、まず機体の登録が必要です。
これは、ドローン登録システムを通じて行われ、購入時に一度だけの手続きとなります。
この登録をする際には、機体についての詳細な情報や、所有者の情報などが必要となります。

飛行許可申請

次に、飛行許可の申請が必要です。
これは、国土交通省への飛行承認飛行許可承認手続きを通じて行われます。
この手続きは、少なくともシーズンごとに1回は必要となります。

飛行計画登録

また、飛行計画の登録も必要です。
これは、ドローン情報基盤システム(FISS)を通じて行われ、ドローンを飛ばす度に登録が必要となります。
これらの手続きは、10種類以上の書類作成が必要となるため、非常に手間がかかる作業になります。

代理申請について

飛行許可の申請は、農業用ドローンを扱う代理店で代理申請を行ってくれるケースもありますが、それでも多くの情報提供や書類の準備が必要となります。
初心者にとっては、これらの手続きは難易度が高いものですが、購入店や代理店のサポートを受けることで、スムーズに手続きを進めることができます。
購入を検討する際には、このようなサポートが充実しているかどうかを確認することが重要です。

必要書類の整理

これらの手続きを進める際には、事前に必要な情報や書類を整理しておくことがおすすめです。
これにより、手続きの進行がスムーズになり、ミスも少なくなります。

結論として、ドローンの導入は、農業の効率化や生産性向上に寄与するものですが、そのための手続きや準備も無視できないものです。
導入を検討する際には、これらの点をしっかりと考慮し、最適な選択をすることが求められます。

デメリット5:ドローン農薬散布最大のネック「ドリフト」問題と対策

ドローン散布の最大の課題である「ドリフト」に焦点を当て、その対策について詳しく解説していきます。

ドリフトとは?

ドローンを用いた農薬散布の際、最も注意すべき問題が「ドリフト」です。
これは、ドローンが高濃度の薬剤を微細な霧状で散布する際、液滴が小さくなり風に乗って飛ばされる現象を指します。
この結果、農薬が意図しない場所に飛散してしまうことがあります。

特に、隣接する畑や作物に影響を及ぼす可能性があるため、この問題は深刻です。

ドリフト対策の三つのポイント

ドリフトを防ぐための対策は、以下の三つのポイントに集約されます。

  • 風向きと風速の確認:散布前には、風の状態をしっかりとチェック。風向きや風速が安定している時にのみ作業を行うことが基本です。
  • 散布の高さの調整:ドローンの飛行高さを適切に設定することで、ドリフトのリスクを低減できます。高すぎると風に乗りやすく、低すぎると作物にダメージを与える可能性があるため、適切な高さの設定が求められます。
  • 薬剤の選択:ドローン専用の薬剤を使用することで、ドリフトのリスクを大きく抑えることができます。農林水産省で指定されたドローン用の農薬を選ぶことが重要です。

ドローンのメリットが無人ヘリとの比較で見えてくる

ドローンがいかに画期的なマシーンであるかということは、産業用無人ヘリコプターと比較してみるとよくわかります。

機動性

産業用無人ヘリコプターは、全長3.6m、重量70kgというスケールですが、これに対して、ドローンは全長1.2m、重量12kgと非常にコンパクトで、ドローンは狭い場所や急な傾斜地でもの散布が可能となり、機動力に優れています。

コスト

ヘリコプターの機体価格は最低でも500万円以上の費用がかかる上、大きな機体と重量のため取り扱いには3人以上の人員が必要です。
また維持費や燃料費が高く、長期的な運用コストがかかります。
一方ドローンの初期投資も高いものの、維持費や運用コストは比較的低いです。

このため、ドローンはコスト面でも有利と言えます。

準備

無人ヘリコプターは、起動から飛行までの時間が長く、準備にも手間がかかりますが、ドローンはバッテリーをセットして起動するだけで短時間での飛行が可能です。
これにより、急な天候の変化や突発的な病害虫の発生にも迅速に対応することができます。

騒音

産業用無人ヘリコプターはエンジンを使用しているため、騒音が大きいという問題があります。
これに対して、ドローンは電動で動作するため、騒音が非常に少ないです。
住宅地近くや早朝・夜間の作業においても、騒音トラブルを避けることができます。

精度

ドローンは、高度なセンシング技術やGPSを活用して、精密な散布が可能です。
特定のエリアや作物にピンポイントでの散布や、病害虫の発生している部分だけに薬剤を散布することもできます。

これに対して、無人ヘリコプターは広範囲を一度に散布することを主目的としており、ピンポイントの散布は難しく、この点においてもドローンの利便性は高いといえます。

操縦性

ヘリコプターの操縦は非常にデリケートで難しく、気象条件の影響も受けやすいので、風に煽られたりして操縦を狂わせると墜落につながる危険があります。

しかし、ドローンは風などにも安定的に対応できるため、この点でもドローンに分があるようです。
ドローンと産業用無人ヘリコプターは、それぞれ異なる特性と利点を持っています。しかし、ドローンはそのコンパクトさ、取り回しの良さ、騒音の少なさ、散布の精度、コスト面での利点など、多くのメリットを持っています。

これらの特性を活かし、農業の効率化と生産性の向上を目指すことが重要です。

まとめ

2022年6月の改正航空法施行により、100グラム以上のドローンの機体登録が義務化。この措置はドローンの安全飛行を目的としており、違反時には罰金や懲役が科せられることとなりました。

また、事故報告も義務化され、天候不良などの外的要因による事故も含まれるようになりました。
この法改正を受け、ドローンの登録数は2021年12月の5,209機から、23年2月には驚異の33万1020機へと増加したのですが、しかし、農業用ドローンの正確な数はまだ把握されていないのが状態です。

農業におけるドローンの活用は、これからが本当のスタートと言えるでしょう。

一方、農業におけるドローンの活用は、特に農薬散布代行業としてのビジネスチャンスとしても注目されています。
高齢化が進む中、新技術の導入が求められる農業現場で、ドローンは農地のセンシングやデータ収集、収穫サポートなど、多岐にわたる用途での活用が期待されています。

また、ドローン自体も日々進化しており、今後はさらに多機能なドローンが登場することでしょう。
この新しいマシーンは、農業の未来をきり開こうとしているように思えてなりません。

この記事の監修者
名木イサム
名木 イサム
淡路島の農家の長男。舞台俳優として国内外の公演に参加。「藝術」の「藝」は「種を蒔き育てる」の意味で、「カルチャー」は「耕す」を意味するラテン語が語源だからして現在、実家でアグリカルチャー(農業)に向き合いながら執筆活動を展開中。