ほうれん草畑

ほうれん草の正しい栽培方法とは?特徴やよくあるトラブルの対策方法についても解説!

2023.10.04
目次
  1. ほうれん草の特徴
  2. ほうれん草の栽培方法
  3. ほうれん草栽培によくあるトラブルと対策方法
  4. まとめ

ほうれん草は栄養価が高く、多くの調理方法で楽しめる野菜です。農業と食品に関する知識を深め、元気で美味しいほうれん草を育てるためには、正しいほうれん草の栽培に関する知識が必要です。この記事では、ほうれん草の栄養価、栽培方法、調理法、病気についての知識をまとめ、ほうれんそうを種から育て、食卓で消費者に美味しく食べてもらうまでの道のりを解説します。

1. ほうれん草の特徴

ほうれん草を栽培する農家にとって、栄養素や調理方法を理解することは極めて重要です。なぜなら、ほうれん草は栄養価が豊富で、野菜として健康に良い影響を与える成分を含んでいるからです。農家が栄養素を理解することで、適切な栽培方法を選択し、収穫物の品質を最大化できます。また、調理方法を知ることで、ほうれん草の風味や栄養価を保持しながら、美味しく提供できます。この知識は市場競争力を高め、顧客に高品質な製品を提供するために不可欠です。総じて、ほうれん草の栄養素と調理方法を理解することは、農業経営の成功と健康促進に欠かせない要素と言えます。ここからは、ほうれん草の栄養素や美味しい食べ方について解説します。

成長したほうれん草

栄養素

ほうれん草は、緑黄色野菜の一種で、その栄養価の高さから注目されている野菜の一つです。特に、ほうれん草に含まれるβ-カロテン、ビタミンC、鉄、カリウムには身体に優れた効用があります。以下でそれぞれの栄養素とその効果について詳しく説明します。

β-カロテン:老化の予防に役立つ

ほうれん草に多く含まれるβ-カロテンは、強力な抗酸化作用を持っています。この抗酸化作用によって、体内の酸化を抑制し、老化や生活習慣病の予防に寄与します。特に、β-カロテンは体内で優先的に酸化されるため、体全体の酸化を防ぐ効果があります。なお、β-カロテンは脂溶性の栄養素であるため、油と一緒に摂取すると吸収率が高まります。

ビタミンC:免疫力向上とコラーゲン生成

ビタミンCは、ほうれん草に含まれる重要な栄養素の一つです。このビタミンはコラーゲンの生成に必要不可欠であり、また、免疫力を向上させる役割も果たします。感染症や風邪などの時期には、ビタミンCの必要量が増加することがあります。興味深いことに、冬に収穫されたほうれん草には、夏に収穫されたものと比較して3倍ものビタミンCが含まれています。

鉄:ほうれん草の代名詞

ほうれん草は鉄分の豊富な食品としても知られています。その中でも、ほうれん草に含まれる鉄は非ヘム鉄と呼ばれ、吸収率が低いという特徴があります。しかし、非ヘム鉄の吸収率を上げるために、ビタミンCや動物性たんぱく質と一緒に摂取することをおすすめします。この組み合わせによって、鉄の吸収が効率的に行われ、鉄欠乏症のリスクを低減できます。

カリウム:塩分の調整と健康維持

ほうれん草に含まれるカリウムは、体内の余分なナトリウム(塩分)を排出する役割を果たします。このため、カリウムは塩分の摂り過ぎを調整し、むくみの解消や正常な血圧を維持するのに役立つ重要な栄養素と言えます。適切なカリウムの摂取は、健康な生活をサポートする鍵となります。

ほうれん草の美味しい食べ方

ほうれん草は、おひたしや和え物、炒め物など、さまざまな料理に使える多目的な野菜です。しかし、美味しく調理するためには適切な下ごしらえとアク抜きが重要です。以下では、ほうれん草の下ごしらえとアク抜きの方法を詳しく説明します。

ほうれん草の洗い方

ほうれん草を美味しく調理するために、洗う際のポイントを押さえましょう。まず、ほうれん草の根元に赤くなった部分がありますが、これを注意深く見てください。この部分に細かい十字の切り込みを入れると、土や汚れが取りやすくなります。ただし、束をバラバラに切り離さないように気をつけましょう。次に、根元を十分な水に浸して、上下に揺すり洗いを行います。数回水を替えながら、土や汚れをしっかり落としましょう。最後に、葉の部分に流水をかけてさらに洗い流し、下ごしらえが完了です。

ほうれん草のアク抜き

ほうれん草には「シュウ酸」と呼ばれるアクの主成分が含まれています。シュウ酸は体内でカルシウムと結合し、結石を形成する可能性があるため、アク抜きは重要です。アク抜きの方法は以下の通りです:

  • たっぷりの湯を沸かし、少量の塩を加える。
  • 沸騰した湯にほうれん草を根元からゆっくりと入れ、約10秒後に葉先まで全体を湯に入れる。
  • 1分以内にほうれん草を湯から取り出し、すぐに冷水に浸す。
  • 根元からまとめて軽く絞って余分な水気を取り除く。

これにより、ほうれん草のアクが抜け、美味しく食べられるようになります。下ごしらえが終わったら、ほうれん草を好みの大きさにカットして、お好みの料理に使いましょう。

おすすめの料理

ほうれん草をつかったおすすめの料理を、下記に紹介します。

ほうれん草のアーモンド和え

「ほうれん草のアーモンド和え」は、ほうれん草を使った簡単で美味しい副菜です。アーモンドの香ばしさが特徴で、ほうれん草の旨味を引き立てています。アーモンド和えは副菜やお弁当のおかずとして最適で、アーモンド以外のナッツでもアレンジ可能です。

ほうれん草の巣ごもり

「ほうれん草の巣ごもり」は、朝食にぴったりの美味しい料理です。ほうれん草に塩気のあるベーコンと卵を組み合わせ、彩り豊かな一品となります。卵はお好みで半熟や固めに焼き、ベーコンを他の具材に変えたり野菜を加えたりする幅広いアレンジが楽しめます。

ほうれん草のビーガンカルボナーラ

「ほうれん草のビーガンカルボナーラ」は、身体に優しいビーガンメニューです。とろとろのソースがスパゲッティに絡みつき、濃厚な味わいを楽しむことができます。卵や乳製品を使わないため、ヘルシーな選択肢としてもおすすめです。ほうれん草をサッと炒めて食感も楽しめます。

ほうれん草とベーコンのおからマフィン

「ほうれん草とベーコンのおからマフィン」は、ほうれん草、ベーコン、チーズを組み合わせた食欲をそそるおかず系マフィンのレシピです。栄養たっぷりでヘルシーな軽食としても最適で、ほうれん草とおからの組み合わせがボリューム感を提供します。アレンジの幅も広い一品です。

2. ほうれん草の栽培方法

ほうれん草の栽培時期

ほうれん草の栽培スケジュールは下記のとおりです。

表1:ほうれん草の栽培スケジュール
春まき 夏まき 秋まき
1 - - 収穫
2 土づくり - -
3 種まき - -
4 収穫 - -
5 収穫 - -
6 収穫 土づくり -
7 収穫 種まき -
8 - 収穫 土づくり
9 - 収穫 種まき
10 - 収穫 収穫
11 - - 収穫
12 - - 収穫

土づくり

土づくりは、ほうれん草の健全な生育を保つために非常に重要です。特に土壌の酸性度が高い場合、ほうれん草の生育が不ぞろいになる可能性があります。以下の手順に従って、土づくりを正しく行いましょう。

1.酸性土壌の調整

まず、土壌の酸性度を調整します。土壌の酸性度が高い場合は、種まきの2週間以上前に苦土石灰を全面に散布し、深く耕します。これにより土壌の酸性度を中和し、ほうれん草の生育環境を改善します。

2.堆肥と元肥の施し

1週間前になると、完熟堆肥を1平方メートルあたり約2kg施し、化成肥料を1平方メートルあたり23握り(100〜150g)程度施します。このステップにより、ほうれん草に必要な栄養素を供給し、健康な成長を促進します。

3.畝の作成

その後、畝を作成します。畝はほうれん草を植えるための準備です。畝幅は60〜90cm程度とし、ほうれん草の栽培に適したスペースを確保します。

ポイント: 土壌酸性度の注意

酸性度が強い土壌の場合、特に注意が必要です。1平方メートル当たりの苦土石灰は2〜3握り(100〜150g)を使い、酸性度を調整します。酸性が強い場合は、苦土石灰を3握りほど増やすことをおすすめします。これにより、ほうれん草の土壌環境を改善し、健康的な収穫を期待できます。

ほうれん草の種まき

ほうれん草の種まきは、成功するための重要なステップです。以下は種まきの手順とポイントです。

種まきの手順

1.まき溝の準備

まき溝を用意します。まき溝は深さを1.5~2cm、幅を3cmほどに設定し、底をできるだけ平らにします。

2.種まき

まき溝にほうれん草の種をまきます。種まき時に種同士の間隔が1~2cm程度になるように均等にまきます。

3.覆土

まき溝にまいた種を覆土します。約1cmの厚さの土を種の上にかけ、軽く土を押さえます。

4.水やり

種まき後、しっかりと水を与えます。土を湿らせ、種が発芽するために必要な湿度を保ちます。

5.まき溝の配置

畝の幅によってまき溝の条数が異なります。畝幅が60cmの場合は4条、90cmの場合は6条程度のまき溝を作成します。

ほうれん草の苗

ポイント: 高温期の芽出しまき

高温期には芽出しまきが有効です。芽出しまきの方法は、種を水に一晩浸け、水切りして湿った布で包み、ポリ袋に入れて冷蔵庫に保存します。約1mmほどの根が1割程度の種に根が出たら、種まきを行います。プライマックス処理が施された種は芽出しまきが不要です。

間引き・追肥・中耕など

ほうれん草の栽培管理において、引き、追肥、および中耕などのステップが重要です。以下はこれらの栽培管理の手順とポイントです。

栽培管理のポイント

発芽までの水やり

種まき後、土壌を乾かさないように水やりを行います。通常、5~7日ほどでほうれん草は発芽します。水分供給を確保し、種の発芽をサポートします。

間引き

1回目の間引きは本葉が1〜2枚の時に行います。株間を3cm程度に保つように、生育の遅い苗や葉形の悪い苗を思い切って抜き取ります。これにより、健康的な成長を促進します。

2回目の間引き

2回目の間引きは本葉が3〜4枚の時に行います。株間を約6cm程度に広げ、ほうれん草の株に適切なスペースを提供します。

追肥

2回目の間引きの後、追肥を行います。化成肥料(N:P:K=8:8:8)を1平方メートル当たり1握り(約50g)を条間に均等にまきます。追肥の際には、肥料が葉に直接かからないように注意します。

間引き

間引き作業は思い切って行いましょう。生育の遅い苗や形の悪い苗を取り除き、葉同士が適切に重なり合わないようにします。追肥の際には、葉に肥料がかからないように心掛けましょう。

収穫

ほうれん草の収穫に関する手順とポイントは以下の通りです。

収穫のタイミング

ほうれん草の草丈が20cm以上に成長したものから順次収穫します。草丈が適切な高さに達したら収穫の準備を始めましょう。

ほうれん草畑

収穫方法

ほうれん草の収穫は、株を傷つけないように注意が必要です。根元を抜き取ると株を傷つける恐れがあるため、ハサミやナイフを使って根元を切る方法が適しています。株全体を優しく切り取り、収穫します。

ポイント1:トウ立ち

夏まきや春まき栽培では、品種によってはトウ立ちする株が出ることがあります。トウ立ちが始まる前に早めの収穫を心掛けましょう。トウ立ちすると食感が固くなるため、若いうちに収穫することがおすすめです。

ポイント2:霜に当たるとおいしくなる

ほうれん草は寒さに強く、霜が降りても繊維が柔らかくなり甘みが増します。霜に当たることで風味が向上するため、寒冷紗や不織布を使用して簡易なトンネルをかけることで、生育を早めたり、厳寒期に葉先が傷むことを防ぐことができます。

収穫したほうれん草

3. ほうれん草栽培によくあるトラブルと対策方法

これからほうれん草を栽培する方や、ほうれん草の栽培のトラブルを解決しようとしている方は、栽培で発生するトラブルについて正しく理解する必要があります。ここからは、ほうれん草の主要な病気について、病気の症状とそれに対処する方法について詳しく説明します。

斑点病

病状

斑点病は、ほうれん草の葉に初めは乳白色の小さな斑点が多数現れ、次第に拡大して中央が淡褐色になり、ややへこんで周囲が褐色でやや隆起します。病斑は融合して大型になり、古くなると表面に緑黒色のかびが生じ、中央が破れて穴ができます。被害を受けた葉は黄化し、激しい部分は枯死して垂れます。

対策方法

  • 被害を受けた作物は圃場外に出して処分することで、第一次伝染源を排除する。
  • 降雨による土のはね上げによる伝染を防ぐため、畝の肩や畝間に敷きわらやマルチを使う。
  • 適正な施肥管理を行い、過繁茂を避けます。厚まきを控え、ほうれん草の生育状態を適切に管理します。

白斑病

病状

白斑病は、ホウレンソウの葉面に初めは白色から淡褐色の小さな斑点を生じます。これらの病斑は後に周辺部が褐色、中心部が淡褐色に変化し、外縁部分は退色してやや黄色みを帯びます。病斑は表面が乾燥すると破れやすくなり、融合して大型の病斑となることがあります。また、多湿な環境下では、中心部分に黒色のかびが生じることもあります。この病気の特徴は、葉に白色の小斑点ができ、その後、斑点が拡大し、融合し、多湿環境下では分生子を形成し、その部分が暗色に変色することです。

対策方法

  • 発病の差は品種によるものではないため、乾燥状態を保つことが発病回避につながります。
  • 薬剤防除には、アリエッティ水和剤、コサイド3000、ユニフォーム粒剤などが利用できます。早急にこれらの薬剤を発病圃場で散布することが推奨されています。
  • 海外では、種子を介して感染が広がることが報告されているため、種子の品質管理にも注意が必要です。
  • 炭疽病

    病状

    炭疽病は、ホウレンソウの葉および茎に発生します。葉に初め水浸状で円形の小さな斑点を生じ、次第に拡大して直径2~10mmになり、灰色ないし淡黄色の輪郭の明瞭な病斑に変化します。さらに、これらの病斑は互いに融合して不規則な大型の同心輪紋状になり、その上に小さな黒粒点が密集します。後に病斑部は腐敗し、乾燥するともろくなり穴が開きます。葉柄には褐色の紡錘形の斑点ができ、外葉が垂れ下がります。茎では地際の片側に淡褐色のへこんだ病斑ができます。

    対策方法

    • 連作を避ける
    • 被害作物の残り部分は圃場外に運び出して処分する。
    • 過度な茂りや土壌の過湿、多肥栽培などが要因となるため、粗植え、排水の確保、適切な施肥管理を心がける。

    べと病

    病状

    べと病は葉に発生する病気で、子葉または成葉の表面に青白色または黄色の境界が不鮮明な小さな斑点を生じ、次第にこれらの斑点が拡大して淡黄色または淡紅色で不規則な病斑になります。さらに、葉の大部分が淡黄色に変色し、枯死することがあります。病斑の裏面にはネズミ色または灰紫色の粉状のかび(胞子)が生じます。べと病は通常、下位葉に発生します。若い幼苗期に感染すると、株が枯死し、乾燥してしまうことがあり、株が消失することもあります。秋に発病した株は、冬季には病斑が消失するように見えますが、翌春になると再び萎縮し、奇形を呈することがあります。

    対策方法

    • 種子伝染のリスクがあるため、健全な種子を使用することが重要です。春および秋季にべと病が多発する場合は、抵抗性の品種を選ぶ。
    • チッソ過多や密植栽培は被害を助長する可能性があるため、適正な施肥管理と植物間の適切な間隔を確保する。

    4. まとめ

    ほうれん草はその栄養価の豊富さと多様な調理法から、健康的で美味しい食事の一部として広く愛されています。栄養素を最大限に引き出すために、畑の準備から始まり、種まき、栽培管理、収穫に至るまでの工程を正しく理解することが不可欠です。また、ほうれん草は斑点病、白斑病、炭疽病、べと病などの病気にも注意が必要ですが、適切な防除策を講じることで被害を最小限に抑えることができます。

    畑から流通、調理、食卓への道のりで、ほうれん草の魅力を最大限に引き出し、持続可能なほうれん草の栽培を目指ししましょう。

    この記事の監修者
    田中和男
    田中 和男
    卒業後、地元のJAに就職し30年以上農機センターで勤務。 定年退職後、自ら中古農機事業を立ち上げて地元を中心に販売・買取やレンタルを行う。 農業機械1級整備士の資格あり。 自らも兼業農家として実家の農業を50年近くやっています。