イチゴの正しい栽培方法とは?特徴やよくあるトラブルの対策方法についても解説!

イチゴの正しい栽培方法とは?特徴やよくあるトラブルの対策方法についても解説!

2023.10.02

イチゴの正しい栽培方法とは?特徴やよくあるトラブルの対策方法についても解説!

目次
  1. イチゴの特徴
  2. イチゴの栽培方法
  3. イチゴ栽培によくあるトラブルと対策方法
  4. まとめ

いちごの栽培方法と栄養素について知り、おいしいいちごの食べ方を学び、病気から守るための対策方法を理解することで、元気で美味しいいちごを育てられるようになります。この記事では、いちごの栽培から収穫、美味しい食べ方まで、詳細に解説します。特に正しい栽培方法は、いちごを栽培したい初心者からベテランの農家まで役立つ情報です。

1. イチゴの特徴

イチゴの栄養素や調理方法の理解は、農家にとって極めて重要です。栄養素の把握は、生育や収穫時期の最適化に不可欠で、作物の品質向上につながります。また、イチゴの栄養価や特性を知ることで、市場競争力が高まり、消費者に対して優れた品質のイチゴを提供できます。一方、調理方法の理解は、生産物の付加価値を高め、商品の多様な利用法を開発するのに役立ちます。これにより、農産物の利益を最大化し、安定的な収益を確保できるでしょう。総じて、イチゴの栄養素と調理方法に対する知識は、農家が成功するために不可欠な要素です。ここからは、イチゴの栄養素と美味しい食べ方について説明します。

栄養素

まずは、イチゴのもつ栄養素について説明します。

いちごは、そのほとんどが水分で占められている果物ですが、実はビタミンやミネラルなどが豊富に含まれており、健康への多くの効能が期待されています。以下では、いちごの主な栄養素とその効果について解説します。

果物の中でもトップクラスのビタミンC

いちごは、ビタミンCの王様とも呼ばれ、他の果物に比べて驚くほど多くのビタミンCを含んでいます。実際、グレープフルーツやミカンの約2倍もの量です。ビタミンCには抗酸化作用があり、皮膚や血管の老化を防ぎ、さらにストレスや風邪に対する抵抗力を高める助けとなります。中サイズのいちご約13粒を摂取するだけで、1日に必要なビタミンCを補うことができるので、積極的に摂りたい方にはおすすめの食材です。

むくみを撃退するカリウム

いちごには、カリウムが豊富に含まれており、代謝の改善や過剰なナトリウム(塩分)の排泄を促進します。これにより、むくみや高血圧の予防に役立つとされています。

疲れにくい体をつくる鉄

いちごには、貧血や疲れやすさに関係する鉄も含まれていますが、注意が必要です。この鉄は非ヘム鉄と呼ばれ、吸収が他の食品に比べて劣ることがあります。ヘム鉄(魚介類やレバーに多く含まれる種類)と比べて吸収率は低いため、鉄を摂取する際には他の鉄源と組み合わせることがおすすめです。

血糖値の上昇を緩やかにする食物繊維

いちごには、水溶性食物繊維のペクチンと不溶性食物繊維が含まれています。ペクチンは水に溶けやすく、血糖値の急激な上昇を防ぐのに役立ちます。一方、不溶性食物繊維は便秘の解消に寄与します。これらの食物繊維が腸内の健康をサポートし、血糖値のコントロールに寄与します。

貧血に効果的なビタミンB(葉酸)

いちごには、ビタミンB群の一つである葉酸も含まれています。葉酸は赤血球の生産を促進し、貧血の予防に役立ちます。また、妊娠中の女性には特に重要な栄養素であり、胎児の正常な発育に寄与します。

イチゴの美味しい食べ方

いちごを手に入れたら、そのおいしさを最大限に引き立てる食べ方を知りたくなりますよね。ここからは、いちごのおいしさを損なわない洗い方や、甘さを存分に楽しむための食べ方についていくつかのポイントをご紹介します。ぜひ、いちごを食べる前に以下のポイントをチェックしてみてください。

食べる直前に水洗いする

いちごを手に入れたら、保存の際にヘタをそのまま残しましょう。いちごに余計な水分を吸わせたり、水っぽくなったり、傷つけたりしないためにも、いちごをおいしく楽しむためには食べる直前に水洗いを行いましょう。やさしく水流で流すか、ボウルに水を張っていちごを浸して優しく洗い流すことで、清潔にいちごを仕上げることができます。

ヘタを付けたままボウルで洗う

いちごは比較的デリケートな果物です。力を入れて洗うと傷つけてしまい、傷んだ部分から水分が吸収され、いちごが水っぽくなることがあります。洗う際にはヘタをそのままにして、ボウルに水を張って行いましょう。多めの水にいちごを浸け、水を優しくかき混ぜながら、浮いてくるほこりやゴミを取り除きます。洗い終わったら、キッチンペーパーなどでやさしく水気を拭き取ります。

ヘタの部分から食べる

いちごを洗い終えたら、さっそく味わってみましょう!いちごは、ヘタの部分よりも先端の方が甘みが豊かです。そのため、食べ始めるときにはヘタの部分から食べると、最後まで甘さの余韻を楽しむことができます。小さないちごでも、ヘタの部分から食べることをおすすめします。これにより、いちごのおいしさを最大限に引き立てることができます。

2. イチゴの栽培方法

イチゴの栽培時期

イチゴの栽培スケジュールは下記のとおりです。

表1:イチゴの栽培スケジュール
春植え 秋植え
2 土づくり
3 土づくり・植え付け
4 植え付け
5 植え付け 収穫
6 植え付け 収穫
7 収穫 収穫
8 休み 休み
9 休み 休み
10 収穫 土づくり・植え付け
11 収穫 収穫

土づくり

イチゴの栽培は長期間にわたりますので、適切な土壌の整備が非常に重要です。イチゴは特に堆肥や腐植質に富んだ土壌を好み、健康的に成長するためには以下のポイントに留意することが大切です。

有機質に富んだ土壌を選ぶ

イチゴの土づくりの第一歩は、有機質に富んだ土地を選ぶことです。有機物が多く含まれた土壌は、根の成長を促進し、株全体の健康をサポートします。有機質な土壌は、土壌中の微生物の活性化を促進し、栄養素の供給を改善します。

良好な水はけを確保する

イチゴの根は水を好む一方で、水はけが悪い土壌は根腐れなどの問題を引き起こす可能性があります。したがって、イチゴの栽培に適した土地を選ぶ際には、水はけが良い場所を選びましょう。土壌中に過剰な水分がたまらないようにするため、斜面状の地形が望ましいことがあります。

保肥力のある土壌を整える

イチゴは長期間にわたって実をつける作物であり、株全体に栄養を供給するためには保肥力のある土壌が必要です。土壌に元肥として長期間効果が持続する有機肥料を混ぜ込むことをおすすめします。これにより、イチゴの成長期間中に必要な栄養分を持続的に供給し、健康な収穫を実現できます。

イチゴの植え付け

イチゴの栽培において、適切な植え付けは収穫の成功に重要な役割を果たします。以下に、イチゴの植え付けに関するポイントをご紹介します。

元肥は控えめに

まず、元肥についてです。元肥は植えつけの際に土壌に与える肥料で、過剰な使用は逆効果となります。特に鉢植えの場合は、ウォータースペース(根の成長空間)をしっかりと確保しましょう。土壌は有機物が豊富で、肥料を保持しやすく、かつ水はけが良い状態であることが望ましいです。元肥としては、長期間にわたって効果が持続する緩効性の有機肥料を選びましょう。

適切な株間距離を確保

コンテナ栽培の場合、イチゴの植え付けには株間距離に注意が必要です。一般的には、7〜8号の丸鉢に1株、60cm幅のプランターに2株を目安として植えることが良いでしょう。イチゴは水分に敏感で、過乾燥を避けるためにも株間距離を確保しましょう。

イチゴの苗

クラウンに土をかぶらせない

植え付け時には、イチゴの株元にある「クラウン」(茎の基部)に土がかぶらないように気をつけましょう。クラウンを埋めると株が腐敗しやすくなり、健康な成長を妨げることがあります。

マルチを活用

畑でのイチゴの植え付けの際には、30cmの間隔で植えることをおすすめします。また、マルチを使用すると、土壌からの水はけが改善され、イチゴが病気にかかりにくくなります。

秋植えの場合の注意点

秋にイチゴを植える場合、以下のポイントに注意しましょう

摘花

定植後1ヶ月間に咲いてくる花を摘み取り、充実した株を作りましょう。

ランナー(子株)の処理

発生したランナーは随時切り取ることで、株のエネルギーを主軸の実に集中させることができます。

肥料

イチゴは肥料濃度が高い土壌を好まず、高濃度の肥料が根の傷みや枯れの原因となることがあります。したがって、イチゴの肥料管理は慎重に行う必要があります。以下は、植え付け時と追肥時のポイントです。

植え付け時の肥料管理

植え付け時には、固形や粒剤の高濃度肥料を避け、ゆっくりと効果を発揮する緩効性の元肥をおすすめします。特に花芽がつくまでは、株を過度に茂らせず、肥料を控えめに施すことが重要です。これにより、健康的な根の成長を促進し、株全体のバランスを保つことができます。

追肥の管理

新しい葉が展開してきたら、生長を促進するためにリン酸分を多く含む肥料で追肥を行いましょう。追肥には速効性のある液体肥料がおすすめです。週に1度程度、適切な液肥を与えることで、イチゴの成長をサポートします。ただし、元肥と追肥を過度に施すと、花芽の形成が阻害され、葉とランナーが過剰に発生する可能性があるため、肥料の過剰使用には注意が必要です。

人工受粉

イチゴの花が咲いて、雄しべの葯が開いて花粉を放出する段階になったら、受粉を行うことが重要です。以下は、受粉の手順についてのポイントです。

花粉の受粉

花粉がでてきたら、綿棒や筆を使って、雄しべから取り出した花粉を雌しべにまんべんなく塗布(受粉)させましょう。このプロセスは、イチゴの実を形成するために必要な受粉作業です。受粉させる際には、雌しべに十分な花粉が付くように注意してください。

イチゴの花の受粉

実の成熟

受粉後、実の成熟までの期間は開花時期や品種によって異なりますが、一般的には15から30日程度かかります。実の成熟を待ちましょう。イチゴはこの期間に実を育て、成熟させます。

受粉の継続

受粉は一度だけでなく、開花期間中に継続的に行うことが重要です。繁殖効率を高めるため、開花時期に雄しべの花粉を雌しべに受粉させる作業を繰り返すことで、収穫量や品質を向上させることができます。

収穫

イチゴの収穫は、果実を大きく育てるために重要な作業です。以下は、収穫に関するポイントです。

十分な栄養供給

イチゴの果実を大きく育てるためには、収穫期にも株に十分な栄養を供給することが必要です。株が健康的で充実していることは、実の品質と収量に影響を与えます。

ランナー(蔓状の芽)の切り取り

収穫期に伸びてきたランナー(蔓状の芽)は、株元で切り取りましょう。これにより、株のエネルギーが果実に集中し、収穫量と品質の向上に寄与します。

収穫前のイチゴ

温度管理

特に、10℃以下の低温期や30℃以上の高温期には、着果や果実の肥大が進まないことがあります。したがって、これらの状況下では、株の充実を優先させましょう。適切な温度管理は収穫の成功に重要です。

収穫の目安

イチゴの品種によって収穫の目安が異なります。以下は主要な品種ごとの収穫目安です。

らくなりイチゴ、ドルチェベリー、ローズベリー・レッド

果実全体が赤くなったら収穫しましょう。

蜜香

やや色が薄いですが、果実から香りがしてきたら収穫可能です。

白蜜香

蜜香と同様に果実から香りがしてきます。種の色がピンク色に変わったら収穫できます。

イチゴの収穫

3. イチゴ栽培によくあるトラブルと対策方法

これからイチゴを栽培する方や、イチゴの栽培のトラブルを解決しようとしている方は、栽培で発生するトラブルについて正しく理解する必要があります。ここからは、イチゴの主要な病気について、病気の症状とそれに対処する方法について詳しく説明します。

炭疽病

症状

炭疽病は、いちごの葉や実に黒い斑点が現れ、これらの斑点は次第に褐色から黒色に変化します。感染が進行すると、実が腐敗し、形状が崩れます。

対策方法:

感染部分の早期除去

炭疽病に感染した部分を発見したら、それを含む葉や実をすみやかに切り取り、処分します。感染が広がる前に取り除くことが重要です。

植物の通気性向上

いちごの植栽間隔を広く取り、植物同士が密集しないようにします。また、葉と実が湿った状態にならないよう、水やりは慎重に行い、水滴が葉や実に付着しないように気をつけます。

防疫剤の使用

防疫剤を使用して、病気の発病を予防または抑制します。防疫剤の使用に関しては、地域や病気の状況に応じて専門家のアドバイスを仰ぎましょう。

うどんこ病

症状

うどんこ病は、いちごの葉に小さな黒い斑点が現れ、これらの斑点は次第に褐色から黒色に変化します。葉が歪んだり、枯れたりすることもあります。

対策方法

感染部分の早期除去

うどんこ病に感染した葉を発見したら、感染部分を含む葉を切り取り、処分します。感染が拡大する前に取り除くことが大切です。

通気性の良い環境維持

いちごの植えつけ時に植物同士の間隔を広く取り、風通しを良くします。湿度を低く保つことも感染リスクを減少させます。

適切な間隔での植えつけ

いちごを過密に植えつけないようにし、十分な間隔を保つことで通気性を確保しましょう。

防疫剤の使用

防疫剤を利用して、病気の発病を予防または抑制します。適切な防疫剤の種類と使用タイミングについては、専門家の助言を仰ぎましょう。

灰色かび病

症状

灰色かび病は、いちごの葉や実に灰色から褐色のふわふわとしたカビが生える病気です。感染が進行すると、実が腐敗しやすくなります。

対策方法

感染部分の早期除去

灰色かび病に感染した葉や実を見つけたら、それらを速やかに取り除き、処分します。感染が広がる前に対処しましょう。

通気性の確保

いちごの植物配置により通気性を保つため、植えつけ時の間隔に注意します。湿度の高い環境を避けるため、水を与える際にも葉や実に水滴を付着させないようにしましょう。

定期的な点検と感染部分の切除

植物を定期的に点検し、感染部分を発見した場合は迅速に取り除きます。

萎黄病

症状

萎黄病は、いちごの葉が黄色に変色し、株全体が弱ってしまいます。これにより、実の品質や収量が低下します。

対策方法

感染した植物の隔離と除去

萎黄病に感染した植物は他の健康な植物から隔離し、感染拡大を防ぎます。感染した植物は速やかに取り除き、安全に処分します。

健康な植物との分離植え

健康な植物と感染した植物を分けて植えつけ、感染リスクを最小限にします。

栄養供給と水やりの適切な管理

健康な植物を強化するために、栄養を適切に供給し、水やりを適切に管理します。

萎凋病

症状

萎凋病は、いちごの根に感染し、株全体が弱ります。植物が成長せず、実が小さくなることがあります。

対策方法

感染した植物の隔離と除去

萎凋病に感染した植物は他の健康な植物から隔離し、感染を拡大させません。感染した植物は速やかに取り除き、適切に処分します。

健康な植物の選別

新しい植物を購入する際には、健康な植物を選び、感染源を排除します。

栄養供給と水やりの適切な管理

健康な植物を強化するために、栄養を適切に供給し、水やりを適切に管理します。

4. まとめ

いちごの栽培方法と栄養素、おいしい食べ方、病気対策について多くの情報をご紹介しました。いちごを育て、美味しく食べるためには、適切な土壌や肥料、植えつけ方法が不可欠です。さらに、炭疽病やうどんこ病、灰色かび病、萎黄病、萎凋病などの病気に対する早期対策が重要で、感染部分の取り除きや防疫剤の使用が効果的です。

この記事を通じて、いちごの栽培と食べ方に関する幅広い知識を提供し、初心者からベテラン農家に役立つ情報をお届けしました。

この記事の監修者
田中和男
田中 和男
卒業後、地元のJAに就職し30年以上農機センターで勤務。 定年退職後、自ら中古農機事業を立ち上げて地元を中心に販売・買取やレンタルを行う。 農業機械1級整備士の資格あり。 自らも兼業農家として実家の農業を50年近くやっています。