農作業において、収穫物や作業道具の運搬は欠かせない作業です。そこで活躍するのが「農業用運搬車」で、名前の通り農作業における様々な物の運搬を効率的に行うための機械になります。
収穫した野菜を畑から運ぶ場合は、色々な野菜を運搬できる野菜作業機や、小型のクローラータイプ、あるいは大型のクローラータイプなど、様々な選択肢が考えられます。また、山などの傾斜地では、安定して走行できる性能を持つ運搬車が必要となるでしょう。
しかし、運搬車には種類や機能がたくさんあるため、どれを選べば良いのか迷ってしまう方も多いと思います。また、販売しているメーカーごとに特徴や強みが異なるため、自分の作業環境に最適な一台を見つけるのは、そう簡単ではありません。
そこでこの記事では、農業用運搬車とは一体どのような機械なのか、人気メーカーごとの特徴などを詳しく解説していきます。さらに、失敗しない農業用運搬車の正しい選び方や、耐用年数なども解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
- [目次]
農業用運搬車とは?
農業用運搬車は、収穫物や作業道具などを荷台に載せて運搬できる機械です。
農業用運搬車を使うことで、収穫した作物を一度で大量に畑から運び出せたり、肥料や農薬を必要な場所に運べたり、重たい農機具を移動させたりと、力や移動を頻繁に必要とする農作業を効率的に進めることができます。
一般的には「動力運搬車」や「クローラー運搬車」とも呼ばれており、エンジンを搭載しており自力で動くので、重たい荷物も楽に運搬できます。
運搬車には色々な種類がありますが、大きく分けると「クローラータイプ」と「ホイールタイプ」の2種類になり、クローラータイプはさらに「手押し式」と「乗用式」に分かれます。
クローラータイプ
キャタピラで動くタイプです。ぬかるんだ畑や傾斜地など足場の悪い場所でも安定した走行が可能です。
ホイールタイプ
タイヤで動くタイプです。小型特殊自動車に分類されて、公道を走れるモデルもあります。
手押し式
手で押して歩きながら操作するタイプです。小回りが利くので、狭い場所やビニールハウスの中での作業に適しています。
乗用式
座って運転するタイプです。一度にたくさんの荷物を運んだり、重いものを運ぶのに適しています。
農業用運搬車を販売している人気メーカー5社
農作業の効率化に欠かせない、農業用運搬車は数多くのメーカーが様々な機種を開発しています。ここでは、特に人気の5社「クボタ」「ヤンマー」「筑水キャニコム」「アテックス」「共立(やまびこ)」の特徴を詳しく解説します。
クボタ
クボタは、農業機械で日本一のシェアを誇る大手農機メーカーであり、運搬車におても高評価を受けています。
クボタの運搬車は、主にホイールタイプのモデルを中心に展開しており、特に「RGシリーズ」は、果樹園やハウス内などの、狭い場所での作業で本領を発揮する回転ダンプ仕様が特徴的です。例えば、「RG-15C-D4」は全幅98cmとコンパクトながら、最大1,000kgの積載能力を持ち、狭い場所でも高い機動性を発揮します。
クボタの運搬車は、耐久性と操作性に優れた高性能な一台と言えるでしょう。アフターサービスも充実しており、安心して使用できる点も魅力です。
ヤンマー
ヤンマーは、ディーゼルエンジンの小型実用化に成功したメーカーとして知られています。
運搬車においても幅広いラインナップから選ぶことができ、多様なニーズに応える製品を開発しています。例えば、木材の運搬に特化したものや、野菜の運搬に最適なもの、あぜ道で作業がしやすいものなど、農家の細かな要望に応じたモデルが揃っています。
中でも「FG190SD」は、油圧ダンプ機能を備えた四輪駆動で、公道走行も可能でありながら、20kgのコンテナを10個まで積載できるという、非常に高い汎用性を誇ります。
ヤンマーの運搬車は、優れた機能を備えたモデルがたくさんあることが大きな魅力です。
筑水キャニコム
筑水キャニコムは、産業用機械運搬車製造メーカーとして知られています。
筑水キャニコムの運搬車は、単に荷物を運ぶという機能だけでなく、使用者のことを第一に考えられた使いやすさになっているのが特徴です。
注目すべき運搬車は「ピンクレディー“ポピー”」です。このモデルは、クローラータイプで幅が59cmというスリムな設計で、他の運搬車では作業が難しかった狭い畝間でも、スムーズに移動して作業が行えます。
さらに、この運搬車には作業負担を軽減するアシスト機能が搭載されています。この機能を使えば、100kgの荷物をわずか25kgの力で持ち上げることができるので、女性や高齢者の方でも使いやすいです。
このように、筑水キャニコムでは、使う人のことを考え抜いた運搬車を製造しています。
アテックス
アテックスは、コストパフォーマンスに優れた運搬車を販売するメーカーとして知られており、幅広い方々に支持されています。
例えば「XG355HB キャピー」は、悪路でもスイスイと走行できるように、イコライザ機能を搭載しています。この機能により、畑の中や不整地など、足場の悪い場所でも問題なく作業を行うことができます。
また、荷物の種類や大きさに合わせて荷台の形状を調整できる、スライド荷枠を採用しているため、様々な荷物に対応可能です。さらに、レバー操作一つで簡単に荷下ろしが行えます。
アテックスの運搬車は、農作業で求められる機能性を持ちながら、導入しやすい価格を両立させている点が大きな魅力です。
共立(やまびこ)
共立は、農業機械や産業機械など、幅広い分野の製品を展開しているメーカーです。運搬車においては、クローラータイプとホイールタイプの両方を販売しており、様々な環境で仕様することができます。
「KCGJ801/A」というクローラー運搬車は、コンパクトで扱いやすく、誰でも使える普及品として位置づけられています。最大積載能力は200kgです。手元変速機能を採用しているため、楽な姿勢で作業を行うことができ、長時間の農作業における疲労を軽減することができます。
共立の運搬車は、耐久性が高く長寿命だと評価されており、農家からの信頼も厚いです。
農業用運搬車の選び方や注意点について
続いては、農業用運搬車の選び方や注意点についてです。
中古農機具全般に言えることにはなりますが、ここでは作業環境に合わせた運搬車の選び方と、安全に作業を行うための注意点をご紹介します。
まずは、運搬車の選び方からです。
積載量で選ぶ
運搬車の選択時には、何をどれくらい運ぶのかを明確にすることが大切です。
小型の運搬車は200kg程度の積載量を持ち、野菜や果物などの軽量な作物の運搬に適しています。一方、大型の運搬車は500kg以上の積載量があり、重量物の運搬に最適です。小さすぎて運びきれないと作業効率が落ち、大きすぎてスペースが余る場合は、購入費用が勿体ないです。
運搬する荷物の量を考えて、適切な積載量の機種を選びましょう。
種類で選ぶ
運搬車には、クローラータイプとホイールタイプがあります。両者それぞれに違いがありますが最も大きな違いは、公道が走れるかどうかです。畑と運搬車の保管場所が離れている場合や、畑が点々としている場合などは、ホイールタイプの公道走行が可能なモデルを選ぶのが良いでしょう。
また、クローラータイプには手押し式と乗用式があります。狭い場所で作業する場合は手押し式、広い場所で作業する場合は乗用式が適しています。
エンジンで選ぶ
運搬車の動力源として、ガソリンエンジン・ディーゼルエンジン・電源モーターがあります。
ガソリンエンジンは始動性が良く、小型から中型の運搬車に多く採用されています。ディーゼルエンジンは燃費が良く、エンジンを回転させる力が強いため、大型の運搬車に適しています。電源モーターは静音性と環境性能に優れているので、ハウス内や住宅地の近くでの作業に向いています。
ここからは、運搬車を使用する際の注意点です。
機械の転倒、転落
農業用運搬車での死亡事故として、最も多いのが機械の転倒、転落事故です。
傾斜地で作業する際は、斜面に対して垂直に走行する、急斜面を避けて走行することが大切です。また、急発進・急加速・急停車はバランスを崩す原因となるため、慎重に動かすように心がけましょう。運転時にはシートベルトやヘルメットの着用をするなど、安全対策も忘れないように注意してください。
過積載をしない
運搬車には製品ごとに定められた最大積載量があります。この制限を超えての運転は機械の転倒や破損のリスクを高め、重大な事故につながる可能性があります。
必ず積載量を守り、荷物の乗せ方に偏りが無いように詰むことが大切です。
また、荷物の固定をしっかりと行い、走行中の荷崩れを防ぐことで、安全いに作業を行うことができます。
農業用運搬車の耐用年数について
農業用運搬車の耐用年数は、法律上の減価償却資産として定められており、一般的には7年と定められています。これは、運搬車を購入した際に、その費用を7年間で分割して計上するための期間です。つまり、7年かけて運搬車の資産価値を減らしていくという考え方のため、実際に使用できる寿命とは異なります。
一方、実際の寿命は、使用状況やメンテナンスの頻度、運搬車の保管環境などに大きく左右されます。例えば、毎日長時間使用する場合と、月に数回程度しか使用しない場合では、消耗の度合いが異なるため寿命にも差が出てきます。また、定期的なメンテナンスを怠っている場合や、保管環境が不適切な場合などは、故障のリスクを高める原因となります。
農業用運搬車を長く使用するためのポイント
農業用運搬車のみならず中古農機具全般に言えることにはなりますが、長く使用するためには、以下の3つのポイントを押さえるようにしてください。
1. 定期的なメンテナンスを行う
運搬車のエンジンオイルやミッションオイルの定期的な交換、各部品のグリスアップ、ベルトやワイヤー部品へ潤滑油を注油するなど、日常的な点検と整備を行うことで、機械の劣化を防いで寿命を伸ばすことができます。
また、長期間使用しない場合はガソリンを抜いておくようにしましょう。
2. 防錆び処理をする
荷台やフレーム部分は、堆肥や化成肥料の影響で錆びやすくなります。塗装が剥がれた箇所は早めに錆びを除去し、防錆び剤を塗布することで腐食によるレカを防ぐことができます。
3. 適切な場所に保管する
運搬車を使用した後は、直射日光や雨風を避けられる屋内やカバー付きの場所に保管しましょう。また、保管する前に泥や草などの汚れを落として、清潔な状態を保つことも大切です。
まとめ
今回は、農業用運搬車とはどのような機械なのか、人気メーカーの紹介や正しい選び方などについて解説してきました。
農業用運搬車は、収穫物や作業道具などを効率的に運搬できる機械です。
クローラータイプとホイールタイプの2種類に分かれており、クローラータイプは悪路や傾斜地に強い、ホイールタイプは公道走行が可能なことが特徴です。
運搬車を販売している人気メーカーは、クボタ・ヤンマー・筑水キャニコム・アテックス・共立(やまびこ)の5つで、それぞれ特徴的な機種を展開しています。
運搬車を選ぶ際は、最大積載量・種類・エンジンの3つを考慮して選びましょう。また、運搬車の運転中は、転倒や転落に注意し過積載をしないようにしましょう。
運搬車を長く使用するためには、定期的なメンテナンス・防錆び処理・適切な場所での保管を心がけましょう。
農業用運搬車を使用しているけども、新しい農業用運搬車の購入を検討している。もし、農業用運搬車の買取業者を迷っている方は、こちらから一括査定を依頼してみましょう。